紀元前600年頃に体系化されたといわれるゾロアスター教。
中学校の教科書にも出ていた気がします。
しかし、その内容を把握している人は少ないのではないでしょうか。
別名拝火教とも呼ばれ、その名の通り火を神聖なものとして崇めた宗教でもあります。
個人的な見解になりますが、善悪完全二元論の宗教の割には様々な神様や悪魔の名前を見る事ができ、ある意味神話の様な側面も持っています。
ここでは世界最古の一神教とも言われるゾロアスター教について知ってみましょう。
ゾロアスター教の成り立ちは?
そもそもゾロアスターと言うのは人名です。
クラッシックの曲名にも「ツァラトゥストラはかく語りき」と言うタイトルの曲名がありますが、ゾロアスターの他にもザラスシュトラとかツァラトゥストラとも読まれます。
この宗教が起こった場所は、古代のイラン高原にあたります。
元々この付近ではミスラと言う神様を信仰する人が多く、この他にも様々な神様を独自に敬う文化があった事が分かってます。
それらを取りまとめてアフラ・マズダーと言う神様をまつりましょうと促したのがゾロアスターです。

結果として、ペルシア人の殆どが改宗したとも言われます。
このゾロアスターが誕生したのが紀元前6世紀頃と言われてはいますが、それもまだ定かではなく謎の多い人物です。
創立に至った経緯も不明な点が多いのですが、現在でも全世界に10万人ほどの教徒がいると言われます。
経典の名はアヴェスターと呼ばれ、口伝をメインに編纂された諸編です。

なお、神様をかたどった偶像などは存在せず、代わりに火を信仰しました。
この火も最初に点火したのはゾロアスターと言われています。
その火を絶やさぬように且つ神聖な光ある物として崇敬してきた点は特徴的ですね。
善悪二元論の神様と悪魔

ゾロアスター教も他の神話や伝説と似て勧善懲悪の体制を持っています。
善の最高神はアフラ・マズダー、それに対して悪のトップはアンリ・マンユ(アーリマン)です。
前者は主に真理や生命を司るのに対し、後者は嘘や死を司るといわれ、この2神の抗争の場が現世であるという宗教観です。
アフラ・マスダーは世界を創生する際に自分の神性を7人の神様に分けました。
この一団を7大天使(アムシャ・スプンタ)と呼びます。
なぜ7人かと言うと、創生の際に「空」、「水」、「土」、「植物」、「動物」、「人間」、「火」の順番に作ったとされ、それぞれに対応させたからです。
その他にもこの善なる神様に付き従う天使たちが登場し、以下の様な名前が散見されます。
- スプンタ・マンユ=聖霊
- ウォフ・マナフ=意思、最後の審判の際に全人類の行動を読み上げる役割を担う
- アールマティ=献身の女神
- アムルタート=アフラ・マズダの子供、雨を降らせる
- スラオシャ=「聞く事」を司る天使
この他にもまだ天使は登場しますが、それぞれに役割や担当が明確に設定してあるのも興味深いですね。
旧約聖書の冒頭にある唯一伸が7日かけて世界を創造したと言う逸話に似ています。
数字が同じ点も気になりますね。
魅力的な悪側の神々
ゾロアスター教の場合、他の神話と比較して敵側の設定も非常に作りこまれているのが印象的です。
これは最後に必ず正義が勝つと言う点まで宗教観が完成されているため、それを引き立たせるためにも敵とはいえしっかりディティールが考えられているのだと筆者は考えています。
アンリ・マンユに付き従う悪神は下記が代表的です。
- アエーシェマ=怒りの神、天使スラオシャと仲が悪いとされています。
- タローマティ=アールマティと仲が悪く教えに背かせようと画策する悪神
- アジ・ダハーカ=三つ首の邪竜。非常に強い悪魔で毒を吐き出す。
- ドゥルジ=疫病を蔓延させる女性の悪神
どうでしょうか。こうして敵側の軍勢を一部ピックアップしただけでも、どこか中二病的な魅力を感じます。
アールマティとタローマティのようにそれぞれ対立している神様がいるのも、バトル物の様で面白いですね。
戦いの果ての終末論
ゾロアスター教では、宇宙が始まった瞬間からその終焉までは1万2千年とされています。
その中で3千年×4ずつ区切り、1期間毎にどういう時代なのかと言う考証が設定されています。
アフラ・マズダーが作った宇宙の始まり、つまり第一期はまだ善があふれた時代ですが、アンリ・マンユが登場し戦いが勃発すると人類も混迷を極める時代となります。
そして分離の時代と呼ばれる3期目の時代に差し掛かると、最後の審判と呼ばれる終焉が訪れ、善なる勢力が完全勝利を納めるとなっています。
ここまで細かくストーリが設定されているのも珍しいですね。
この世界観に興味を惹かれる人も多いのではないでしょうか。
ちなみに最後の審判の宗教観は、キリスト教をはじめ様々な宗教に影響を与えています。
人間としては辛い時代でも、「最終的にふるいにかけられるのだからしっかり生きましょう」というのは世界共通の認識なんですね。
まだまだある、ゾロアスター教のここがすごい
ここまではガーっとおおまかなストーリーをメインに書いてきましたが、他に興味深い点として「近親婚を最高の美徳」としている点が挙げられます。
自分の子や親、姉妹や兄弟と結婚をする事は良い事とされ、アルダー・ウィーラーフと言う書物の中には7人の姉妹と結婚した男性の話も出てきます。
また、人が亡くなった際には風葬か鳥葬で送り出します。
現在では見る事もなくなった埋葬法ですが、これは元々善神アフラ・マズダーから授かった肉体をしっかり自然を介して返却しましょうと言う観点から行われていました。
専用の施設が建立される事もあり、鳥が遺体を食せるように敢えて屋根をつけなかった事も分かっています。
火葬や土葬が一般的な今ではカルチャーショックでもありますが、世界の文化と発想の違いを垣間見る事がここでもできますね。
この様にゾロアスター教は独自の宗教観を持ちつつ、様々な宗教にも影響を与えた物語の様な宗教なのです。
コメントを残す