国内外で強い人気を誇るジャンプ漫画「NARUTO -ナルト-」。
累計発行部数は2023年現在で2億5000万部。その人気から漫画だけでなくアニメ、ゲームなど様々なコンテンツが展開されています。
特に海外での人気が極めて高く、2000年代を代表する「ドラゴンボール」の後継作品として認知されています。
また、民話や伝承、宗教のオマージュを取り入れた作品としても知られています。
今回はそんな「ナルト」に登場する日本神話の日本神話の世界について紹介したいと思います。
Contents
須佐之男命の八岐大蛇退治

オマージュとして最もわかりやすいシーンは、イタチが大蛇丸を封印するシーンでしょう。
サスケとイタチの最後の戦いとして重要なシーンでもあります。
イタチと戦っていたサスケはチャクラを使い果たしてしまいます。するとサスケの身体に寄生していた大蛇丸が、ヤマタの術を使い首が8つある巨大な蛇の怪物の姿で現れます。
イタチは「須佐能乎」という巨大な武人の姿を具現化する技を使い、十拳剣を大蛇丸に突き刺しそのまま封印してしまいます。
このシーンは言うまでもなく、日本神話に登場する須佐之男命の八岐大蛇退治を思わせるシーンとなっています。
古事記・日本書紀に登場する八岐大蛇退治は以下のような内容です。
須佐之男命は地上の世界に降り立ち、老夫婦とその娘のクシナダヒメに出会います。
老夫婦は「もうすぐヤマタノオロチという怪物がやって来て、このクシナダヒメも食べられてしまう」と言い悲しみに暮れていました。
それを聞いた須佐之男命は、クシナダヒメとの結婚を条件に八岐大蛇退治を引き受けます。
須佐之男命は強い酒の入った桶を8つ用意して待ち構えます。そうすると八岐大蛇が現れ、8つの頭でその酒を飲んで酔っ払って寝てしまいます。その隙に十拳剣で八岐大蛇を切り刻んで殺してしまいました。
その時に切った尾の中から、三種の神器の一つである草薙剣が現れました。
須佐能乎と十拳の剣で、八岐大蛇を倒すというシーンとなっており、また大蛇丸は草薙の剣を常に体内に隠し持っていて戦闘の際に吐き出すようにして取り出します。
他にもイタチの忍術である須佐能乎は、酒を連想させる瓢箪を持った姿で描かれています。
このように、有名な八岐大蛇退治のエピソードをふんだんに盛り込んだシーンとなっています。
うちは一族の技名
ナルトでは、先述のサスケやイタチの出身であるうちは一族と、千手一族の過去の対立が描かれます。
これは、かつて日本で起きた神道と仏教の対立のオマージュと言われています。
そして神道側を代表するうちは一族の持つ技には日本神話の神の名を冠しているものが複数あります。いくつか紹介したいと思います。
天照

うちは一族の中でもほんの一部の万華鏡写輪眼を開眼した者だけが使用できる技です。
焦点を合わせた物体に対して黒炎を発生させ、対象を燃やし尽くすまで消えません。
神道の最高神である天照大神の名を冠した強力な技です。
須佐能乎

先述の、イタチが大蛇丸を倒した時に発動した技です。須佐之男命の名を冠しています。
巨大な武人の姿を具現化して攻撃する技で、かつ術者を守る盾にもなる攻守一体の作中でも最強クラスの技です。
月読
相手を術者の支配する幻術世界に引きずり込み、一瞬で精神的ダメージを与えて戦闘不能に陥らせる技です。夜を司る月読命の名を冠しています。
月読命は天照大神、須佐之男命とは兄弟で、三貴神の内の1柱です。
別天神
対象者に幻術をかけ、相手に気づかれることすらなく思いのままにコントロールすることができます。
別天津神は天地開闢の時に現れた5柱の神々の総称です。
天津神の中でも性別を持たない独神という特徴を持っており、特別視して別天津神と呼ばれます。
加具土命
先述の「天照」の黒炎をさらに自由に操ることができる能力で、黒炎の形を変化させて剣にしたり弾丸のような飛び道具にすることができます。
加具土命はイザナギとイザナミの間に生まれた最後の神です。
火の神である加具土命は、生れた時にイザナミに火傷を負わせてしまい、イザナミはそれが元で死んでしまいます。
そして怒ったイザナギに十拳の剣で殺されてしまいます。
母を殺し、父に殺されたかわいそうな神様です。
「主人公ナルトは大国主がモデル」説について

このように漫画「ナルト」が日本神話の要素を盛り込んで描かれていることは間違いありませんが、ナルトのモデルは大国主命ではないかという説もファンの間ではささやかれています。
その根拠はサスケとのライバル関係と日本神話の類似性にあります。
日本神話において大国主命は、天照大神の勢力と対立します。
日本神話の神々は天津神、国津神という2種類に分類され、天津神は高天原で生まれた神々、国津神は地上で生まれた神々です。
先ほど紹介した、うちは一族の技名になっている神々は全て天津神であり、大国主命は国津神の主宰神です。
神話でも漫画でも、天津神と国津神のライバル関係が描かれているというわけです。
またもう一つの根拠は、大国主神話との類似性です。
ナルトの成長する姿は、古事記の中でも重要な位置を占める大国主神話と似ています。
大国主神話の物語は簡単に以下のような内容です。
末子として産まれた大国主は兄弟たちから疎まれ虐められていました。
ついには兄弟たちに殺されてしまいますが、母である刺国若比売の力で蘇ります。
大国主は兄弟たちを恐れて根の国へ逃亡します。そして根の国で様々な試練を乗り越え大きく成長を遂げた大国主は、遂には出雲の国を治める王となります。
この波乱万丈の大国主神話は、孤独で惨めな幼少期を過ごしたものの、様々な経験を通して成長し火影を目指すナルトの姿に重なります。
知れば知るほど面白い「ナルト」の神話的要素
「ナルト」に用いられた日本神話の要素について紹介しました。
ここでは紹介しきれませんでしたが、他にも蘇我氏と物部氏の宗教対立を思わせるストーリーやキャラクター名に隠された神の名前など、宗教や神話の要素がふんだんに盛り込まれた作品となっています。
読めば読むほど今まで気づいていなかった神話要素に気づかされるかもしれませんね。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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