クトゥルフ神話:ナイアルラトホテップ・ニャルラトホテプ

這いよる混沌
這いよる混沌、ニャルラトホテプ(douzen様画)

クトゥルフ神話最高の人気者、ナイアとかニャルとか色々な呼び方をされるのは、それほど多くの作品に登場している証拠です。

今回はそんなクトゥルフ神話のスター、「Nyarlathotep」についてのお話です。

「ナイアルラトホテップ」の概要

クトゥルフ神話の売れっ子「ナイアルラトホテップ」は、アザトースに仕え、あらゆる時空に現れてはアザトースの意思を具現化するために行動しています。

アザトース(Dominique Signoret)
アザトース(Dominique Signoret)原典

人間の敵でも味方でもなく、秩序を破り狂気と混乱をもたらすために動いているのです。

また、他の旧支配者や神を罵ったり馬鹿にしたりと、大胆不敵な存在でもあります。

馬鹿にする相手には自身の主人「アザトース」も含まれていますから、大胆という次元を超越していますね。

旧支配者に分類されることがあるのですが、作品によってはアザトース、シュブ=ニグラス、ヨグ=ソトースと同じく「外なる神」の1つにされているものもあります。

クトゥルフ神話最高位となるアザトースによって生まれ、旧神によって封印されている旧支配者と異なり、自由に活動できる能力を持っています。

そのため、最高クラスに位置する力を持っているのですが、ダーレスによって設定された四属性のために、格下のクトゥルフやハスターよりさらに下のクトゥグァが天敵という、不憫としか言えない立場を押し付けられてしまっています。

Cthugha(クトゥグア)
Cthugha(クトゥグア、douzen様画)

なお、ナイアルラトホテップは決まった姿を持たず、様々な姿を取って人間の前に現れます。

「千の貌を持つもの」や「無貌の神」といった別名は、その無定形から名付けられているのです。

人間の前に現れる時には、預言者、物理学者、神父など識者を装ってくることが多いです。

ナイアーラトテップ
H・Pラヴクラフトの作品『魔女の家の夢』で「黒い男」として現れたナイアーラトテップ(Jens Heimdahl

また、アザトースの使者であることから「這いよる混沌」「大いなる使者」といった異名もあります。

この異名の量は、クトゥルフ神話において最多です。

しかも、名前それぞれが独特な言い回しになっているため、これが多くの作家が好んで登場させる要因の一つでもありますね。

このように多くの作者や訳者の主観が入ったため、ナイアルラトホテップ、ナイアーラトテップ、ニャルラトホテプなど、色々な呼び名がついてしまっているのです。

こんな正体不明でやりたい放題の存在が、これほど多くの人を魅了しているのはなぜでしょうか。

見た目が完璧なアイドル?

這いよる混沌
這いよる混沌、ニャルラトホテプ(douzen様画)

ナイアルラトホテップが初めて世に出てきたのは、「クトゥルフの呼び声」発刊より6年前のことで、ラブクラフトが実際に見た悪夢が元になった小説です。

小説のタイトルはそのもの、「ナイアルラトホテップ」。

初登場の時から人の姿を取り、堂々と「ナイアルラトホテップ」と名乗ったことから、この名前が付けられました。

本当の名前は、人間に発音できるものではありません。

それ以後、ラブクラフト以外にもオーガスト・ダーレス、ロバート・ブロックなど多くの作家が題材にし、その度に設定や呼び名が追加されていきました。

さらに姿も変えていて、ファラオ、可憐な少女(後に肥大化した女へ変身)、ジャズサックス奏者といった人間から、ゼラチン状の塊や黒い嵐といった生物ですらないものにまで変化します。

これは前述のとおり、本来の姿を持たず「千の貌を持つもの」と言われるほど様々な姿を取る存在と知られているためです。

そのため、作者の好きな姿を取らせて「千の貌の一つ」と言い切ることができてしまいます。

どんなご都合主義にも合わせてくれるナイアルラトホテップさん。ありがたい存在です。

これでは古本屋のグラマーな女主人や銀髪の美少女の姿を取っていても、特別おかしいとは言えないですよね。

もちろん、人気の理由はその容姿だけではありません。

内面においても、人気者になる素質を持っているのです。

最悪な性格のドジっ子アイドル

ナイアルラトホテップは、ラブクラフトの作品からトリックスターとして描かれています。

冒頭では人間の味方のように立ち振舞い、終盤になると人間を見捨てて世界の秩序を破壊して混沌に陥れようとする。

そんな真の悪者や黒幕的な立場に置かれているのが、ナイアルラトホテップです。

ただ圧倒的な悪者ではなく、人間を陥れるため捻りまくったことをした結果、逆に人間に出し抜かれて逃げられてしまうというお茶目な部分も持ち合わせています。

またある時は、神々に願いを聞いてもらおうと旅してきた人間に対して、「神々の元へ送ってやる」と言って実は自分の主人であるアザトースの元へ送り、狂気に陥れようとしています。

その性格の悪さが良くわかりますね。(詳しく知りたい方は「未知なるカダスを夢に求めて」を読んでみてください)

やりたい放題のナイアルラトホテップ、この自由度の高さが人気の秘密なのでしょう。

まとめ

クトゥルフ神話に位置づけられている小説や詩で約20作、それ以外の作品になると確認できるだけでも30作を超える数に出演しているナイアルラトホテップ。

その人気の秘密は、クリエイターが自由に決めても差し支えがない容姿と、混沌と秩序を揺り動かして暗躍する設定。

この2つにあるということがご理解いただけましたでしょうか。

美少女の姿をしていてもいいですし、正義の味方から寝返って悪さをしてもいい。

どんな設定でも差し支えのないキャラクターのため、非常に使い勝手がいいのです。

今後も、奇想天外なナイアルラトホテップが出てくるに違いありません。

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