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薄紅天女
- 小説 (蒼月海里著)
- 関連する神話/伝承:更級日記とアテルイ伝説


勾玉シリーズは神話を元にした物語ですが、この薄紅天女だけは主人公が少年たちとなっています。
舞台は京都や蝦夷などで、蝦夷の巫女が物語のポイントとなっています。
日本の定番の神話とは少し違いますが、またこちらも神話好きには魅力を感じるお話だと思います。
陰陽師 生成り姫
- 小説
- 関連する神話/伝承:安倍晴明伝説・五寸釘伝説

夢枕獏の陰陽師シリーズ作品の一つ。
平安時代には非常に社会的地位の高かったとされる職業・陰陽師のうち、妖(あやかし)との噂のあった安倍晴明が、不可思議なものごとに呪術で対峙していくストーリー。
この作品では男の浮気を知った黒髪の美女が登場し、生霊となり五寸釘で相手を祟ろうと、男の屋敷に夜な夜な現れます。
それを清明が解決しますが、夢枕獏さんの描写が凄まじく鳥肌モノでした。
鉄輪(かなわ)を頭にはめ、炎の息を吐く鬼女の薄気味悪さが臨場感をもってうまく表現されていました。
よく耳にする五寸釘伝説の印象とはまったく違った重苦しいものでした。
安倍晴明は呪術を操り人を惑わすキツネのような存在と言われますが、この作品ではちょっぴり温かい心があるようにも思えます。
どうやら安倍晴明は冷酷非道な天才というキャラクターだけではなく、これぞと見込んだ相手には人間らしい愛情を抱けるらしい、ということを知りました。
カンピオーネ!
- 小説 (ライトノベル)
- 関連する神話/伝承:ギリシア神話、ペルシャ神話、ゾロアスター教、西遊記、インド神話、アーサー王伝説、日本神話

この作品を大雑把に言うと、神話の世界(異世界の様なもの)から現実に出てきた神々(作中では”まつろわぬ神々”と呼称されている)とその神々を殺し、神の力(権能)を奪い取った人間たちが世界各地で神々と闘うというものです。
これだけ聞けば、一山幾らのラノベといった感じですが、もちろんそれだけではありません。
私がこの作品で最も気に入ったのは、登場する神々の来歴や神話の成立過程にまで踏み込んで、文化人類学の領域にまでスポットライト当てている点です。
たとえば、アーサー王伝説の成立にはシャルルマーニュ伝説やケルト神話の他にも、アレス(マルス)やバトラズといったより古い時代の神話の神々の逸話や信仰を取り込んでいく事で今の形になったのだ、という話などがあります。
このように伝承や逸話だけではなく、過去の人間社会と神話や信仰のと繋がりをも読むことが出来大変読みごたえのある作品となっており、自信をもってオススメできる作品です。
幻想古書店で珈琲を
- 小説 (蒼月海里著)
- 関連する神話/伝承:ギリシア神話やエジプト神話の天使、悪魔

この作品は、縁を失いそうになった人の前に現れる不思議な古書店「止まり木」の主人である亜門と、ひょんなことからそこで働き始めた失業直後の新社会人である司が心を通わせながらそれぞれの生き方、あり方について考えていくという心温まる物語です。
亜門はかつて魔人アモンと恐れられた悪魔であり、人と恋に落ちるもついぞ思いを成就させることが叶わなかった過去を持ちます。
司が自分の人生という物語を紡いでいく過程で、亜門の友人であるコバルト(ベルゼブブ)やアスモデウス、ラファエルなどと関わり、様々な価値観や生き方を知っていきます。
人ならざる彼らには彼らなりの考え方や存在意義があり、それを知った司が彼らと共に生きるあり方を考えていく物語です。
私は、人と人ならざる者が互いを思いやり心を通わせていくほっこりとした展開が好きになりました。
この作品を通して、アスモデウスがサラという人間を気に入り彼女の相手となる男性を次々と苦しめたことや彼とラファエルの因縁、ベルゼブブが高位の存在から一般的には「蠅の王」と呼ばれるようになってしまったことを知ることができました。
作者である蒼月海里さんは、この物語と世界線がつながっている他シリーズも執筆なさっています。
「幽落町おばけ駄菓子屋」「華舞鬼町おばけ写真館」では日本の伝承である妖や印旛沼の竜、天狗などが登場し、「深海カフェ海底二万哩」では創作神話であるクトゥルフ神話をモチーフにしたキャラクターが登場します。
こちらの作品からもそれぞれの神話の成り立ちや特徴を知ることができます。
シルマリルの物語
- 小説
- 関連する神話/伝承:北欧神話、トールキン作品

指輪物語で有名なJ.R.R・トールキンの作品です。
指輪物語の世界設定の根幹部分である中つ国の神話について、その世界の創世から詳しく描かれた本です。
トールキンは自身が西洋の神話を研究してい学者というだけあって、北欧神話を基盤としながらも独自の美学に溢れる神話体系を構築しています。
指輪物語を読んでその世界の根本部分に興味をもった方は是非一読してみると良いと思います。
十二国記
- 小説
- 関連する神話/伝承:中国の神話、山海経

この小説に出てくる怪物の多くと植物が、山海経やその他中国系の神話や伝説に出てきます。
小説の世界観をもっと知ろうとして、その過程で山海経の本(漢文)を買い、字の意味を調べながら何とか読み解くことができました。
そのおかげで簡単な漢文なら大体の意味がわかるようになりました。
空色勾玉
- 小説
- 関連する神話/伝承:日本神話(古事記)

古代の輝(かぐ)と闇(くら)の氏族の争いに巻き込まれる巫女姫の話なのだが……下敷きにされているのは、日本を作ったイザナギ・イザナミという夫婦神の伝説と、その代表的な子どもである3人の神の話。
日本神話をあまり知らない頃に読んでも十分楽しめたが、知ったあとに読み返せば面白さは数十倍になる。
日本神話のファンタジー小説がなければ自分で書けば良いじゃない!という作者が書いただけあって、ここまで考えられ、読みごたえがある和風ファンタジーはめったにない。

日本と言う国がまだ誕生したばかりの頃が舞台で、神様がまだ地上にいらした時代です。
主人公のサヤとう少女は、田舎に暮らす普通の子どもでしたが、実は闇の女神に仕える水の乙女。
女神がどうして闇に落ちたのか、日本神話でも描かれている部分もあり、日本神話好きにはたまりません。
楽しいムーミン一家
- 小説
- 関連する神話/伝承:北欧の伝承、トロール

よく動物と間違われるムーミンですが、かれらは妖精です。
アニメのイメージも強いのですが、もともとは小説で、絵本のような感じのものではないので、少し読みにくい部分もあります。
挿絵もあまりなく、ストーリー的にも意味が分からない部分もところどころありますが、人気のムーミンの原点はみんなに知ってもらいたいです。
断章のグリム
- 小説(ライトノベル)
- 関連する神話/伝承:グリム童話及びバックグラウンドとなったヨーロッパの伝承

非情に苛烈な描写が多数描かれるライトノベル。
グリム童話を主体としながら、その背景となったヨーロッパの伝承や日本の伝承などになぞらえての解釈などが多数展開される作品。
肉体的にも精神的にも読者が「痛い」と感じる部分も多いが、作品としての完成度は極めて高い。
『ティー・パーティー(八幡高校超常研報告)』シリーズ
- 小説(ライトノベル)
- 関連する神話/伝承:インド神話

講談社ティーンズハートという少女向けのレーベルで、一人称で話は進んでいきます。
シリーズの前半はそこまでインド神話の記述はなく、神様が一人二人登場するくらいですが、後半に向けて神話との繋がり、主人公の正体など徐々に明らかになっていくお話がすごく好きです。
ガンダールヴァ、キンナラ、アスラ、シャチーなどのインド神話の神々の名はこの小説で初めて知りました。
シリーズの中で、パラレルワールド、陰陽道、怪獣、火星人など様々な要素を扱われていましたが、主人公の根幹をなすインド神話こそがこの話の柱です。
白鳥異伝
- 小説(ライトノベル)
- 関連する神話/伝承:日本神話

日本神話でも誰もが耳にしたことがある「ヤマトタケル」伝説を元にしたファンタジー作品です。
二人の少年少女が主人公ですが、成長するにつれ、これまでとは同じように生活できなくなる葛藤も描かれており、単純に神話的な部分だけでなく、人間っぽいところも描かれた作品です。
妖魔夜行
- 小説(ライトノベル)
- 関連する神話/伝承:妖怪

様々な妖怪による怪奇を、同じく正そうとする妖怪が捜査、または戦いで解決していく物語です。
表紙や挿入されているイラストはとても美しく昔のライトノベルなのでリアル寄り、読者年齢層は高めだと思います。
群衆劇になりますがどの人物も生き生きとしており、やや官能方面もあり、面白いのでオススメです。
萩原規子による勾玉シリーズと呼ばれるシリーズの三作目です。
一作目は日本神話、二作目はヤマトタケル伝説、と徐々に時代を下りつつ、作中の鍵である勾玉にまつわる少年少女の冒険を描いています。
日本を舞台にしながらも時代劇的ではなく、異国のファンタジーを読んでいるような気にさせられます。
シリーズのどの作品も素晴らしいですが、薄紅天女は特に主人公の少年少女が魅力的です。