【カバラ】セフィロトの樹など、ユダヤの賢人たちが編み出した秘儀

カバラに記されている生命の樹
カバラに記されている生命の樹(原典

現代のアニメ作品やライトノベル、特に「とあるシリーズ」や「Fateシリーズ」、また「エヴァンゲリオン」などが好きな方なら「セフィロトの樹」という言葉を耳にした事があると思います。

後で詳しく説明しますが、これは本来、神からの創造の過程を象徴的に表したもので、この有名な図式はユダヤ教の神秘主義であるカバラの思想に由来しています。

カバラはアレイスター・クロウリーなどを筆頭とする近代西洋魔術の体系にも組み込まれており、神秘主義の中でもかなりポピュラーなものです。

今回は、カバラとはどういった思想なのか、その歴史などと共に紹介していきたいと思います。

カバラとは

カバラという語は「受け取る」「伝承」などの意味のヘブライ語に由来しています。

伝承によれば、カバラはシナイの山頂で神からモーセに授けられた秘儀であるとされ、旧約聖書などに込められた意味を解釈し、神と世界の秘密に接近しようとする思想です。

補足:モーセ

『出エジプト記』に登場する、古代イスラエル民族の指導者。
ヘブライ人を率いてエジプトを脱出し、シナイ山の頂きで神から十戒を受ける。

補足:シナイ山

アラビア半島とアフリカ大陸北東部の間のシナイ半島にある山。ここでモーセは神から十戒を授かった。

この神秘説は旧約聖書『創世記』のエデンの園の説話に起因する、人類の神からの分離を克服し、人と神を再び結び付け、秘められた知識を獲得する為に発達したとも伝えられます。

ユダヤの神秘主義としてのカバラは2世紀後半頃に確認されます。この時代はキリスト教とユダヤ教が分離した時期になります。それから以後3~6世紀にかけて発展していき、12世紀後半頃、北スペインや南フランスで歴史的なスタートを切りました。

この12世紀後半から「カバラ」という名で隆興し、『バヒール(光輝の書)』という文書が成立、盲人イサクと呼ばれる「瞑想」を重視したカバラ思想家が活躍しました。

その後、1280年代には『ゾーハル』と呼ばれるカバラ文献が執筆され、この書物がカバラ思想の中で最も重要な文献として古典的地位を獲得していきます。

後で詳しく説明しますが、本来カバラは秘教的なものであり、モーセは神から律法を授かった際、それら律法の神秘的な解釈の方法も授けられたと伝承されています。その解釈は書物として残さず、弟子に文字通り「伝承」していく事が求められました。

補足:律法(トーラー)

モーセ五書。旧約聖書の「創世記」「出エジプト記」「レビ記」「民数記」「申命記」。

このような神秘的な教えを公にせずに内密にしておくという慣習は、プラトンやアリストテレス、ピュタゴラスといった古代の哲学者にも共通します。

カバラの思想の一つに「神との神秘的合一」があります。神との接触を描く文書は聖書の偽典『エチオピア語エノク書』などに散見されている為、カバラの伝統はおおよそ紀元前に遡るともされます。

補足:プラトン

古代ギリシアの哲学者。この世に存在するのは全ての原型である「イデア」の似姿に過ぎないとするイデア論を提唱した。

補足:アリストテレス

プラトンの弟子の哲学者。天動説などを軸とする『天体論』、自然哲学に纏わる『自然学』などを著す。

文字への信仰

キルヒャーの「エジプトのオイディプス」より(原典

カバラの特徴として挙げられるのが、文字に対して神秘的な価値を見出しているという点です。

カバラ主義者、俗に言うカバリストは、モーセやその他の預言者が伝えてきた神の言葉、即ちヘブライ語に神秘主義的な解釈を加えており、この言葉、また文字は真理を内包していると考えました。

ヘブライ単語を何かしらの略語と見なし、その冒頭の一字から文章を引き出す「ノタリコン」、様々な組み合わせを行う「テムラー」など、文字から隠された意味を見出す術を多く編み出しています。

また、旧約聖書の『出エジプト記』14章19節―21節を一節ごとにヘブライ語にするとそれぞれ七十二文字になるとされ、19節を右から左、20節を左から右、21節を右から左に書き、縦読みして語尾に神を意味する「El」や「Yh」を付けて「シェムハメフォラシュ」と呼ばれる七十二の天使を作り出すものも有名です。

ヘブライ語には数を表す記号が無く、ヘブライ文字で数字を示しました。即ちヘブライ文字はそれ自体が量的な意味を持っており、これを用いた解釈方が「ゲマトリア」と呼ばれ、現代にもある占いの一つである「数秘術」に繋がっていきます。

新約聖書の最後の正典『ヨハネの黙示録』における獣の数字「666」がローマ皇帝ネロの寓意であるとするのも、このゲマトリアという技法を用いて導き出すことができます。具体的には、ローマ皇帝ネロの名前をギリシア語にし、更にヘブライ語にしてその文字に対応する数字を合計すると666になります。

カバリストにとって、ヘブライ語とは神が世界を創造する為に用いた言語とされます。実際に旧約聖書の『創世記』では「光あれ」という神の一言から創造が始まっています。この場合の言語とは普段から使っている「コミュニケーションの為の言語」では無く、ニュアンス的には神秘的な力を帯びた「言霊」に近いです。

彼らが何故、文字を用いてこれだけの解釈法を編み出したのかと言うと、ヘブライ語聖書、その中でもモーセ五書と呼ばれる旧約聖書最初の5文書の中に秘められた意味を読み解く為でした。

『トーラー』と呼ばれるこの文書群は『創世記』『出エジプト記』『レビ記』『民数記』『申命記』から構成され、これらは実は「一続きの様々な神名」であるとしました。

カバリストであったモーゼス・ベン・ナハマン(1195~1270)はこの説を以下のように要約しました。

「『トーラー』の全体はいくつもの神名から成っており……われわれが読むその言葉がまったく異なる区切り方でも読みうる……『トーラー』は、続けざまに、言葉の切れ目もなく書き下ろされたひとつづきのさまざまな(神の)名前として読むこともできれば、古来からの読み方どおり、物語及び戒律として読むこともできたのだ。かくて『トーラー』は、神の戒律として読む言葉に区分された形でモーセに伝授された。しかし、同時に彼は、口伝えによって『トーラー』をひとつづきのさまざまな名前として読む伝承をも授かった。」

この要約からは、ユダヤ教で重要視される律法(トーラー)を「物語や戒律として読む」のは一般的な読み方だと考えられていることが伺えます。そうではない読み方、それが先述した「トーラーを一続きの神の名として読む」というものであり、モーセが口伝で授かった読み方です。

この読解法はカバリスト達にとっては重要なものであり、神による天地創造の秘密を読み解く行為であるとされていました。

「メルカバ―」と「ヘハロト」の秘儀

『エゼキエルの幻視』(ラファエロ・サンティ、1518年、原典

ユダヤの神秘思想が動き出したのは紀元後2世紀頃になりますが、カバラ以前にもユダヤ教には秘儀的な思想がありました。

その思想とは、魂を神的な高位の世界に飛ばす「天路遍歴(てんろへんれき)」と呼ばれるタイプのものであり、俗に「メルカバ―神秘主義」と呼ばれます。

このメルカバーという言葉は「神の戦車」を意味し、旧約聖書の預言書の一つである『エゼキエル書』一章に登場します。その聖書箇所では以下のように描写されています。

「またその中には、四つの生き物の姿があった。その有様はこうであった。彼らは人間のようなものであった。それぞれが四つの顔を持ち、四つの翼を持っていた」エゼキエル書1章5―7節

「その顔は人間の顔のようであり、四つとも右に獅子の顔、左に牛の顔、そして四つとも後ろには鷲の顔を持っていた」同章10節

「わたしが生き物を見ていると、四つの顔を持つ生き物の傍らの地に一つの車輪が見えた。それらの車輪の有様と構造は、緑柱石のように輝いていて、四つとも同じような姿をしていた。その有様と構造は車輪の中にもう一つの車輪があるかのようでもあった」同章15―16節

「生き物の頭上にある大空の上に、サファイアのように見える王座の形をしたものがあり、王座のようなものの上には高く人間のように見える姿をしたものがあった」同章26節

神の戦車に対する記述はおおまかにこの辺りになります。

メルカバ―に関する伝承に曰く、神(YHWH)は智天使(ケルブ)の肩に乗るか、また天高く雲の上に存在しているものと考えられました。

メルカバ―の神秘主義において、神によって創造された世界は地上界と天上世界に区別され、天上界は七つの階層構造を成す「天上の宮殿(ヘハロト)」と呼称されます。この七層目が「神の栄光の玉座」であり、この領域に至った者が神との神秘的合一(ウニオ・ミスティカ)を果たす事が出来るとされます。

ユダヤの神秘思想家たちはこの「神の玉座」に至る為の瞑想法を編み出していき、その主な瞑想の対象として用いられたのがこの「神の戦車」でした。メルカバ―はそれ自体が神の乗り物であり、よってメルカバ―は神の玉座そのものを象徴すると見做されたのです。

メルカバ―の秘儀は師から弟子に口伝の形で伝えられ、10世紀頃にバビロニア地方で活動したユダヤ学者のハイ・ベン・シェリラがその内容を伝えています。

その記録によれば、秘儀の実践者はある日から断食し、己の頭を膝の間に埋め、賛美歌を唱えます。すると、七つの宮殿が見え、さながら己が宮殿から宮殿へと入っていくような幻視をすると説かれています。

七つの階層を上昇していく際にはそれぞれの区画を支配する天使や悪魔などの妨害があり、それらを乗り超える為、実践者には天使の秘密の名、またそれらで構成される魔術的な封印などの知識が必要であるともされます。

これらの神秘思想は主にパレスチナやバビロニアといった地域で3~6世紀頃に隆盛し、そのまま中世の神秘思想に流入していくことになります。

セフィロトの樹

後期カバリストのセフィロトの樹(キルヒャーの「エジプトのオイディプス」からの翻訳、原典

いよいよカバラを代表する、かなりメジャーな思想、セフィロトの樹について触れていきます。

セフィロトの思想は先述したカバラ文献「バヒールの書」において説かれ、全ての物は天上の神からの流出によって創造されたと定義されています。この場合の神というのはカバラでは「隠れたる神」と呼ばれ、エン・ソフ(無限)という固有名詞を持ちます。

神からの流出によって万物が創造されるという思想は、カバラ以外にもグノーシス主義、プロティノスが提唱した新プラトン主義などの神秘思想にも共通します。

補足:グノーシス主義

地中海世界を起源とする紀元2世紀頃に隆盛した思想。人間の生きる物質世界は悪の造物主(固有名詞ヤルダバオト=ユダヤ教の神)によって造られた悪の宇宙であり、善なる至高神の座す天上界に還る事を救済と説く。キリスト教最古の異端思想とされる。

補足:新プラトン主義(ネオプラトニズム)

古代エジプトの哲学者プロティノス(205-270年頃)がプラトンの哲学を発展させたもの。この世の万象は「一者(ト・ヘン)」と呼ばれる存在から流出したものであるとし、人間は神との合一を目指すべきという教えを説く。

エン・ソフからの流出は全部で10段階とされ、その創造の過程を象徴図にしたものが「セフィロトの樹」になります。

セフィロトの樹を構成するのは全部で10のセフィラ(天球)と22の小径(パス)であり、これらの小径は22文字のヘブライ語に対応します。

第一のセフィラであるケテル(王冠)からコクマー(知恵)、ビナー(知性)、ケセド(慈悲)、ゲブラー(峻厳)、ティファレト(美)、ネツァク(勝利)、ホド(栄光)、イェソド(基礎)とジグザグに進み、最終的に十番目のセフィラであるマルクト(王国)に行き付きます。そして、隠されたセフィラとしてケテルとティファレトの間にダアト(知識)が位置しています。

それぞれのセフィラには守護天使が定義されており、ケテルにはユダヤの大天使メタトロン、ゲブラーにはカマエルなどが配置されています。

補足:メタトロン

ユダヤ教における最高位の天使。「天の書記」、「小YWHW」などと呼ばれ、76の異名を持つ。預言者エノクが天使になったものとされ、人類を維持する役目を担う。

補足:カマエル

「神を見る者」を意味し、火星を支配する天使。天使としての階級は能天使であり、一万二千の「破壊の天使」達を監督すると伝承される。一説では、モーセが神から律法を授かるのを妨げ、彼に殺されてしまったとも。また、ヤコブと格闘した天使はカマエルとされる。

セフィロトの樹は左、中央、右の縦線上にセフィラがありますが、それぞれ左から女性・動的な力を意味する「峻厳の柱」、子や調停を象徴する「均衡の柱」、男性・静的な力を象徴する「慈悲の柱」といった名で呼称されます。

この思想は時代と共に精密化されていき、エン・ソフから始まる流出と共に四つの世界が創造されたと伝承されました。

  • 神の最も純粋な属性で構成される「流出世界(アツィルト)」
  • 大天使が存在するとされる「創造世界(ブリアー)」
  • 天使が住み、エデンの園があるとされる「形成世界(イェツィラー)」
  • 現実世界である「活動世界(アッシャー)」

カバラではこのような四つの世界を定義しています。

セフィロトの樹の第十のセフィラであるマルクトは物質世界、つまり現実世界を象徴しており、修行を行うことでマルクトから流出過程を逆に辿り、神の叡智に至る事が出来る、という教義になります。

また、カバラにおける概念で重要なものとして「シェキナ」と呼ばれるものがあります。他のセフィラが男性的な存在であるのに対し、シェキナは女性的な存在とされます。

シェキナという名は「神の住居」「臨在」などを意味し、マルクトに並び第十のセフィラに数えられ、ケテルと同じくメタトロンを守護天使とします。「真・女神転生 Deep strange journey」のラスボスとして登場する神霊シェキナ―はコレが元ネタになります。

以上がセフィロトの思想の概要になります。

この樹を模した象徴図も先に紹介したノタリコンやゲマトリアと同様、天地創造の秘密や世界の理を理解するに至る為のもの、と言えるでしょう。

ゴーレム伝説とアダム

『ラビ・レーヴとゴーレム』(ミコラーシュ・アレシュ、1899年、原典

ファンタジー作品に必ずといって良いほど登場するゴーレムの概念も、実はこのカバラに由来します。

ゴーレムは言わば「人造人間」であり、伝承では16世紀のラビ(ユダヤ人社会を運営する指導者)であるエリア・バールシェムという人物がゴーレムを創造したとされます。その伝説がある種パターン化していき、様々なゴーレムに纏わるフィクションが生み出されました。

ゴーレムの製造法は、断食をした後に祈祷をし、粘土や膠で人形を作った後に「シェムハメフォラシュ」という呪文を唱えたとされます。

このシェムハメフォラシュは文字信仰の項でも触れましたが、七十二の天使、あるいは神の秘められた名であるとされます。この呪文は奇跡を齎し、ゴーレムに生命の火を宿したと伝承されます。

ゴーレムの額には「真理(emeth)」と呼ばれる文字が記されており、人語を話す事は出来ませんが理解する事は出来たとされます。

しかし、ゴーレムは凄まじいスピードで巨大化するという問題を抱えており、処分する為に額の「emeth」の文字の頭文字の「e」を取って「meth(彼は死んだ)」へと変え、元の粘土に戻したと語られます。

これらのゴーレムの伝説には「創造」、そして呪文である「秘された神名」、即ちトーラーを構成する神の名というものが含まれており、カバリストにとって重要な要素が詰まっているのです。

ゴーレムの額に書かれた文字の頭文字を消す事で粘土に戻るという説話も、ある種文字に対する信仰、文字が魔術的な意味を持つというカバラ的信仰が表れているとも考えられますね。

有名なカバリストであり「ユダヤ人のプラトン」とまで呼ばれたソロモン・イブン・ガビロール、通称アヴィケブロンは、ゴーレムの召使いを造り、それを聞いた王が彼を罰しようとした際にはゴーレムを分解し、また元通りに組み立てたといいます。

ユダヤの伝承によれば、ゴーレムとは「完成しないあらゆる物体」を意味します。

また、アダムの創造についても以下のように考えられました。

  • 一時間目 →塵が集められる
  • 二時間目→アダムの形が作られる
  • 三時間目→形のはっきりしない塊(ゴーレム) になる
  • 四時間目→身体の各部位が結び合わされる
  • 五時間目→身体の開口部が開かれる
  • 六時間目→霊魂が宿る
  • 七時間目→自分の足で立ち上がる
  • 八時間目→イヴと結ばれる
  • 九時間目→イヴと共に楽園へ送られる
  • 十時間目→神が命令を下す
  • 十一時間目→罪を犯す(知恵の実を食す)
  • 十二時間目→エデンの園から追放される

※ユダヤの伝承の解釈では、アダムの創造の話は一時間単位の変化との記述があるため、その解釈通り時間単位で変化を記載しています。

また『タルムード』と呼ばれるユダヤ教の聖典では、アダムは最初にゴーレムとして造られ、その大きさは大地から天に届くほどだったと説かれています。

そしてこの巨大なアダムの概念は、アダム以前に創造された原初の人間とされる「アダムカドモン」という思想に繋がっていきます。

この思想を説いたのは、古代エジプトのアレキサンドリアという地で活躍した哲学者フィロンです。アダムカドモンは一般的に「原始の人」と訳され、この説にはユダヤ教からの解釈以外にもグノーシス思想、またプラトン哲学が影響しているとされます。

このアダムカドモンはフィロン曰く「天の人間」であり、対して創世記におけるアダムは「地上の人間」と呼称しています。このアダムカドモンは上述のアダムの創造過程のうち六時間目までのアダムに相当します。

アダムカドモンは神のイメージの中で生み出され、腐敗していく地上的なものでは無く、創世記の冒頭で神が行った世界の創造以前に存在していたものと定義されていました。

またアダムカドモンの頭部は第一のセフィラであるケテルに相当する、というように、彼の身体は世界の創造過程を意味するセフィロトの樹の各セフィラに対応させられることがあります。

ルネサンス期のカバラ

『アテナイの学堂』(ラファエロ・サンティ作、1511年、原典

これまで紹介してきた通り、カバラはユダヤ教の神秘主義ですが、ルネサンス期に入るとこのカバラには様々な解釈が加えられました。

ルネサンス期の人文学者にして哲学者であったピーコ・デッラ・ミランドラ(1463-1494)は「魔術とカバラほどキリストの神性についてわれわれに確証する学知は存在しない」と述べ、イエスの名をノタリコンを使って解読すると「神、神の子、第三の位格を介した神の知恵」であるとし、イエスの名自体がキリスト教における三位一体を意味すると説いています。

同時に神の名の一つであるヤハウェ(YHWH)を意味する四つの文字、聖四文字(テトラ・グラマトン)はイエス(JHESU)の由来であるとし、ユダヤの神秘思想であるカバラがキリスト教における救世主との関係性を説いているとピーコは述べています。

ルネサンス期にはザラスシュトラやオルフェウス、ヘルメス・トリスメギストス、ピュタゴラスといった古代の名だたる宗教者の教えは「古代神学」と呼ばれていました。

そしてピーコはユダヤの秘儀であるカバラを含めた古代神学は共通して「万物の支配者である神の永遠性」「魂の不滅」という教えを持っており、キリスト教の教えと合致すると述べました。

補足:ザラスシュトラ

古代ペルシアで興ったゾロアスター教の開祖とされる人物。古くからのイラン人の信仰を改革し、善神アフラ・マズダ―と悪神アンラ・マンユの対立という二元論を提唱した。

補足:オルフェウス

ギリシア神話に語られる英雄詩人。イアソン率いるアルゴー船の一員だった事もあり、死んだ妻を取り戻す為に冥界へ行った説話が有名。後に輪廻転生や霊魂の救済などを説く「オルフェウス教」という密儀宗教の開祖とされた。

補足:ヘルメス・トリスメギストス

錬金術の祖とされる伝説的な人物。ギリシア神話のヘルメス、エジプト神話の知恵の神トートと同一視される。名は「三倍偉大なヘルメス」の意。

補足:ピュタゴラス

数字に神秘性を見出すピュタゴラス教団の開祖。三平方の定理、無理数などを発見した数学者であり、輪廻転生の思想を特徴とする教えを説いた。

まとめ

今回はユダヤ教の神秘主義にして、身近なアニメ作品やライトノベルのモチーフにもなっているカバラについて紹介させて頂きました。文字に神秘性を見出し、数々の解釈方を作り出した彼らの思想は後世へと語り継がれて行き、西洋魔術や現代の占いなどに影響を及ぼしています。

好きな作品の元ネタがこのような神秘思想であることは意外に結構あることなので、気になる用語があったら調べてみると新たな発見があるかもしれません。

個人的に、カバラを筆頭とする神秘思想や魔術を題材にした作品ではTYP-MOON作品の一つである『ロード・エルメロイⅡ世の事件簿』『魔法使いの夜』などの作品がオススメですので、Fateシリーズが好きな方以外にも神話や宗教学が好きな方は是非ご覧ください。

ここまで読んで頂きありがとうございました。

ライター:樹木

※参考文献

  • 日本聖書協会『聖書 新共同訳』1988年
  • 学研『ユダヤ教の本 旧約聖書が告げるメシア登場の日』学習研究社、1995年
  • スーザン・グリーンウッド著、田内志文訳『魔術の人類史』東洋書林、2015年
  • 伊藤博明著『ルネサンスの神秘思想』講談社、2016年
  • 鏡リュウジ著『タロットの秘密』講談社、2017年
  • 箱崎総一著『カバラ ユダヤ神秘思想の系譜(新・新版)』青土社、2019年
  • 月本昭男監修『図説 一冊で学び直せるキリスト教の本』学研プラス、2020年
  • グスタフ・デイヴィットスン著、吉永進一訳『天使辞典』創元社、2020年
  • カート・セリグマン著、平田寛・澤井繁男訳『魔法 その歴史と正体』平凡社、2021年

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