映画マトリックスとキリスト教・神話との関係

人工知能が人類を支配する未来の世界、人類を解放するために奮闘する主人公たちを描いた映画「マトリックス」。

人工知能が作り出した仮想空間を舞台とした斬新な世界観だけでなく、アクションシーンにこだわった映画となっています。

特に「バレットタイム」と呼ばれるスローモーション効果が話題となり、その後のアクション映画に大きな影響を与えました。

「マトリックス」はAIが人類を支配する未来を描いた作品ですが、聖書やギリシャ神話との深い関係性があることをご存じでしょうか。

今回はそんな、一見縁遠そうなマトリックスと神話の関係について紹介していきます。

マトリックスと聖書の類似性

まずシリーズを通して主人公と共に戦うことになるトリニティとモーフィアスと名乗る二人が主人公の前に現れます。

「トリニティ」という言葉は三位一体を意味します。三位一体とはキリスト教において一神教の概念を支える大切な考え方です。「父なる神、キリスト、精霊」は別々の存在ではなく一体であるという意味です。

「モーフィアス」は、ギリシア神話に登場する夢の神「モルフェウス」がモデルと思われます。AIに支配された人類はカプセルの中で眠らされ、マトリックスという仮想世界で架空の生活をしています。AIとマトリックスの破壊を狙うモーフィアスは、マトリックスの世界で指名手配されている重要人物であり、夢の世界を支配する神の名を冠しています。

また、マトリックスでは現実世界の人類最後の砦である「ザイオン」が登場します。聖地エルサレムをシオンと呼びますが、英語で「Zion」と表記します。人類最後の都市に、3大宗教の聖地エルサレムの名前が付けられています。

また「オラクル」という名の預言者が登場し、主人公たちに助言をします。「オラクル」はそのまま予言という意味です。聖書においてはイエス・キリストの誕生を予言したイザヤや、ユダヤ人をカナンへ導いたモーセなどの預言者が存在します。

他にも、モーフィアスが船長を務めるホバークラフト船「ネブカデネザル号」の乗組み員に裏切り者がいる、兄弟がいるなど、キリストと12人の弟子たちに共通する部分が見られます。

ちなみに船の名前「ネブカデネザル号」は、紀元前にイスラエルを滅ぼしたバビロニアの王ネブカドネザルからとられています。ザイオンを守る人類の船につける名前としては一見不可解です。エルサレムの命運を握るものということでつけられた名称かもしれませんが、真相はわかりません。

主人公はイエス・キリストがモチーフ

キアヌ・リーブス演じる主人公ネオは、イエス・キリストがモチーフだと言われています。

ネオ(neo)はOneのアナグラムです。コンピュータの世界を構成する0と1の1からとられたとも言われますが、「the one」は一神教であるキリスト教において神の意です。

敵に撃たれたものの蘇り覚醒を遂げるシーンなど、イエス・キリストを象徴するような描写が数多くあります。

またザイオンでネオを救世主と信じるか信じないかで意見が分かれますが、これも実在の宗教感を引用しているように思われます。

救世主(メシア)の概念はユダヤ教、キリスト教、イスラム教が共通して持つ概念ですが、それが誰を指すかで意見が分かれます。キリスト教においてはイエス・キリストをメシアと考えます。

ちなみに洋画においてキリストがモチーフとされる事は珍しくありません。「スパイダ―マン2」において、疲労困憊で気絶したスパイダーマンを市民たちが安全な場所に運ぶ有名なシーンがあります。

これは弟子たちがイエス・キリストを十字架から降ろす「十字架降架」がモチーフとなっています。

マトリックスの進化と創世記

仮想世界であるマトリックスが作られた経緯にも、聖書の要素が盛り込まれています。

マトリックスの設計者であるアーキテクトは「私が最初に設計したマトリックスは、芸術作品と呼ぶにふさわしく、完全無欠で、至高だった。」と言います。

しかし、人間が持つ不完全性が原因で破綻してしまいます。

何度かの失敗の後、人間の非合理的な特徴を補う直感プログラムを組み込むことでマトリックスが完成を迎えます。

この経緯は、旧約聖書に登場する「失楽園」の物語と共通しています。神が作ったエデンの園で暮らしていたアダムとイブ。イブはサタンの誘惑に負け、神との約束を破って禁断の果実を食べてしまいます。このことで世界に犯罪や邪念が蔓延ったというあらすじです。

神の禁を破って楽園を追放されるという話は世界中の神話に見られ、パンドラの箱の逸話が有名です。いずれも神が最初に楽園と人間を作り、そして人間の不完全さにより世界が変わってしまう事を暗示しています。

まとめ

映画マトリックスと神話の関係について紹介しました。

未来の世界を描いた作品ですが、紀元前から続く神話がモチーフになっているというのが面白いですね。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

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