【謎に満ちた『ヨハネの黙示録』の正体に迫る】第二回:登場する異形イメージの代表格をご紹介!

『巨大な赤い龍と太陽を着た女』、レッドドラゴン
『巨大な赤い龍と太陽を着た女』(ウィリアム・ブレイク、原典

前回紹介したように、『ヨハネの黙示録』とは、そもそもはキリスト教の信者たちに対して、

  • 教えを守らないと、『世界の終わり』の際に、こんなに恐ろしい風景に巻き込まれる
  • 教えを守っていれば、この『世界の終わり』を乗り越え、その後に訪れる地上の王国に迎えられる

と説明し、信仰のモチベーションを鼓舞するためのものでした。

『巨大な赤い龍と太陽を着た女』、レッドドラゴン

しかしそれで済まされないのが、『ヨハネの黙示録』に横溢するイメージ群のすさまじさでしょう。

現代的な言い方をすれば、「怖くもどこか惹かれる」モンスター(?)とでもいえる類のイメージが、とめどなくあふれ出てくる為、どうしてもサブカルチャーや映画の世界で好んで題材に使われてしまうところがあります。

そもそもの黙示録の意図からすれば正しい読まれ方とは言えないにせよ、この傾向はとどまることはなさそうです。

本サイトも専門の宗教研究ではなく、神話や伝説の話題を扱うサイトですので、この「異形のものたち」という切り口から、ヨハネの黙示録を読んでいきたいと思います。

特に有名なものを、四つほど今回の記事であげてみましょう。

また、ここで紹介したモノたちについては、実は現代の聖書学者たちの努力によって「なんだ、それだけのことか」と拍子抜けするような「モトネタ特定」が完了しています。

その種明かしを第三回に用意しておりますので、そちらもお楽しみに!

悪魔は「赤い龍(レッドドラゴン)」の姿をとる、というイメージを決定づけた

『巨大な赤い龍と太陽を着た女』
『巨大な赤い龍と太陽を着た女』(ウィリアム・ブレイク、原典

『ヨハネの黙示録』には、「冠をかぶった7つの頭をもつ真っ赤な龍」という恐ろしい怪物が現れます。

『ヨハネの黙示録』に出てくる他のモンスター(と呼ぶのかどうかは難しいですが)は、たいていインパクトたっぷりに登場しただけでその後の活動は言及されなかったりするのですが、この真っ赤な龍だけは、

  • 生まれてくる子供(救世主)を食べようとする
  • 失敗したために怒り狂う
  • 大天使ミカエルと大格闘を演じる
  • 地上に落とされ、そこで口から水を吐いて今度は赤ん坊の母(救世主の母)を殺そうとたくらむ
  • その後、『海から現れた獣』『地中から現れた獣』なる新キャラたちと合流して、『悪の三位一体』を完成させる

という、短編ファンタジーロマンになりそうなほどの大活躍をしばらく展開するのです。

こんなに特別扱いの赤い龍は、いったいなんなのか?

結論としては、これは「悪魔の王サタンの化身に違いない」という解釈がなされています。

これが「悪魔はレッドドラゴンの姿をとって地上を襲う」という西欧のイメージの定着につながったのでした。

『巨大な赤い龍と太陽の衣をまとった女』
『巨大な赤い龍と太陽の衣をまとった女』(ウィリアム・ブレイク、原典

この「レッドドラゴン」のビジュアルは、イギリスの作家ブレイクが実に幻想味たっぷりの名画で描いていて有名です。

また、サイコサスペンス映画の『レッドドラゴン』も、犯人の殺人鬼の動機は、そのブレイクの描いた「赤い龍」に憧れて犯罪者になったという設定でした。

インパクトだけ絶大、『海から現れた獣』と『地中から現れた獣』!

『巨大な赤い龍と海から上がってきた獣』
『巨大な赤い龍と海から上がってきた獣』(ウィリアム・ブレイク、原典

先ほどの赤い龍のエピソードの中でも不穏な存在感を放っていたのが、「海から現れた獣」と「地中から現れた獣」でしたね。

「第一の獣と第二の獣」などとも呼ばれ、この二体はコンビで動いているように描写されています。

先ほどの真っ赤な龍との関連でいうと、キリスト教の教義である「神とキリストと天使の三位一体」に対抗するかのような、「赤い龍と海からの獣と地中からの獣の三位一体」を形成しています。

明らかに、この三体、強力そうです。

で、この二匹の獣は何をするのか、というと、キリスト教徒にとってはかなりいやらしい、恐ろしい所業に出ます。

第一の獣は救世主になりすまし、第二の獣はその第一の獣を指して「これがほんもののキリストですよ」と人々を惑わすことで、世界の終末が間近というめちゃくちゃ大事な時期に、よりによって間違った宗教に人類を勧誘するのです。

しかも第二の獣は、恐怖をもって人々を「にせキリスト」を信仰するように追い込んでくるというのですから、かなり悪質です。

※ついでにその「恐怖」というのは、「入信しないともう市場で買い物もさせてあげないよ」というような、村八分系の恐怖のようです。日本人は弱そうですね。。。

「世界の終末が近い」という緊張感と、「しかも入信しないとひどく不幸な目にあわされるらしい」という恐怖が重なると、多くの心の弱い人(というか平均的な人?)は、あわてて「にせキリスト」のほうの宗教に入信してしまうのではないでしょうか?

それこそが二匹の獣の思うつぼなのだ、とも知らず。

ここで登場する、『ヨハネの黙示録』でもっとも有名な記号「666」

『The Number of the Beast is 666』
『The Number of the Beast is 666』(ウィリアム・ブレイク、原典

そしてここで、有名な666の数字が出てきます。

第一の獣(にせキリスト)と第二の獣は、ここで誤った宗教に入信してしまった人々の体に、666のマークを入れる、とされています。

当然、ここで666のマークをつけられてしまった人たちは、この後で本当の救世主が現れた時に、「ああ、あの時に目先のニセモノに惑わされなければよかった!」と後悔することになる、というわけです。

正直いって、これだけを読むと、いったい第一の獣と第二の獣の意図は何だったのだろうという感慨にもとらわれますが。

おそらくできるだけ「救われる人」を少なくしてやろうという、愉快犯的な目的なのでしょう。

となると、やはりこの二匹の獣というのも、悪魔なのだろう、ということになってきますね。

これらのモンスターや記号には意外にシンプルなモトネタが!!次回をお楽しみに!

さて今回は、『ヨハネの黙示録』に登場するブキミな怪物たちの代表格として、赤い龍と海からの獣、地中からの獣を紹介しました。

そして彼らが記号として使う666という数字についても紹介しました。

その他にも、『ヨハネの黙示録』には、

  • 死を象徴する、青白い馬に乗った騎士
  • 地下より大量に湧き出るイナゴ

など、後世の幻想小説やサブカルチャーにたびたび引用されることになる不気味なイメージが続々登場するのですが、それらを紹介しているときりがないので、これくらいにしておきましょう。

そして、予告していた通り、「実は赤い龍」「第一の獣」「第二の獣」「666という数字」については、聖書学者たちの研究によって意外にシンプルな「モトネタ」が既に判明しています。

その「正体あばき」を、次回の第三回で行いますのでぜひご期待ください!

『巨大な赤い龍と太陽を着た女』、レッドドラゴン
『巨大な赤い龍と太陽を着た女』、レッドドラゴン

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