『ヨハネの黙示録』は聖書の最後に収められている書です。
世界が終わる時に起こる出来事についての預言が記されており、聖書の中でも最も難解な書として有名です。その理由として、書かれている多くの言葉が比喩的であるため、様々な解釈ができてしまう点があげられます。
しかし近年起きている出来事の中には、まさにヨハネの黙示録の描写に当てはまるように思えるものがあるのです。このシリーズでは現役の牧師である著者が、現代社会の問題とヨハネの黙示録をリンクさせ、今の時代について検証していきます。
第一回目、まずは私達の生活を変貌させてしまったコロナ・ウイルスを取り上げます。
Contents
終わりの日に何が起こるのか?~四頭の馬とその騎手
ヨハネの黙示録において特に目を引く部分が、「大患難時代(だいかんなんじだい)」と呼ばれる、終わりの日が来る前に起こる厳しい時代についての記述です。神は人類に警告を与えるために、自然災害や戦争、飢饉や疫病が起こる事を許されます。
その象徴として登場するのが、四頭の馬です。それぞれの馬が表しているものを確認してみましょう。
白い馬
「見よ、白い馬が現れ、乗っている者は、弓を持っていた。彼は冠を与えられ、勝利の上に更に勝利を得ようと出て行った」(黙示録6:2)
この白い馬とその騎手はサタンを表します。「サタンならイメージ的に黒じゃないか」と思うかもしれません。しかしサタンは終わりの日には、偽物のキリストとして登場し、大きな力を振るいます。ですから、白い馬に乗っている事も納得がいくのです。これは偽の救世主の姿なのです。「勝利の上に勝利を得る」とは、まさにサタンが大活躍している描写と考えることができます。今の時代は、サタンの力はある程度抑えられていますが、この時代には自由に振舞うようになるのです。
赤い馬
「火のように赤い別の馬が現れた。その馬に乗っている者には、地上から平和を奪い取って、殺し合いをさせる力が与えられた」(黙示録6:4)
赤い馬は戦争を意味しています。ここ百年ほどの間に、第一次世界大戦、第二次世界大戦と大きな戦争が起こり、その後も世界各地で紛争が続きました。これらの戦争により、9千万人前後の人が命を落としたと言われています。黙示録の時代はもう始まっているのかもしれません。
黒い馬
「黒い馬が現れ、乗っている者は、手に秤を持っていた。…小麦は一コイニクスで一デナリオン。大麦は三コイニクスで一デナリオン…」(黙示録6:5~6)
この馬は経済危機を表します。一コイニクスとは、約1リットルです。一デナリオンは約1万円です。現在、小麦の価格は最も安いもので1キロ200円前後です。一リットルの小麦は約600~800グラム(種類による)ですから、これが1万円ということは、終わりの時代には経済が崩壊し、飢饉が起こり、食料が値上がりしていることが分かります。ここまでの食糧危機は現在起こっていませんが、近い将来に起こる可能性もあります。
青白い馬
「見よ、青白い馬が現れ、乗っている者の名は「死」といい、これに陰府が従っていた。彼らには、地上の四分の一を支配し、剣と飢饉と死をもって、更に地上の野獣で人を滅ぼす権威が与えられた」(黙示録6:8)
この青白い馬は「死」そのものであることが書かれています。剣は争いを意味します。飢饉は経済危機、そして食糧危機を表します。そして野獣が人を襲いますが、これは秩序が混乱し、人間が社会をコントロールできなくなり、人間の住む世界と動物の住む世界が一緒になっているような、崩壊した世界がやってくると解釈できます。
これらの記述から、青白い馬が運んでくるのは疫病であると考えてもいいかもしれません。疫病が流行ると死がもたらされ、経済的な混乱が起こり、社会の秩序が乱れていくからです。
そしてイエス・キリストも、終わりの日についてこのように語っています。
「…大きな地震があり、方々に飢饉や疫病が起こり…」(ルカによる福音書21:11)
このような言葉の意味を考えていくと、コロナ・ウイルスは、聖書で預言されていた終わりの時代のしるしと考えることもできるのです。
コロナ・ウイルスの影響

では、コロナ・ウイルスが社会にもたらした影響についてみていきましょう。その影響は青白い馬がもたらす「剣、飢饉、死、野獣」とリンクしています。
剣~深くなる分断
ウイルスへの対策の取り方やウイルスに対する考え方の違いにより、地域間、世代間の分断が進んでしまいました。人と会うことが制限されるため、人との関係が変化しています。
わたしの住んでいる地域では、コロナ・ウイルスに感染したという理由で、肩身が狭くなり、引っ越した人までいます。人々の間に警戒心が生まれ、疑心暗鬼になっています。
また、世界各地で政府に対する不信感は増大しています。強い権威を行使せざるを得ない政府に対する反発や、停滞する経済に対する不満が高まり、人々の心は政府から離れています。ワクチン反対派と賛成派の間で激しい論争が起こり、コミュニティの間で精神的な争いが起きています。
ほんの数年の間に、人々の関係は剣で切り裂かれたかのように分断されてしまったのです。
飢饉~高まる経済的な不安
コロナ対策のため、政府は厳しい施策を取らざるを得なくなり、社会は混乱し、物資の買い占めや流通の停滞、雇用の消失が起きました。物価は上昇する一方で、給料は上がっていく気配がありません。多くの人が経済的な不安を抱えています。本当に食べていけるのかどうか、わからない時代が来ているのです。
死~恐れに縛られる人々
なぜコロナ・ウイルスがここまで社会に影響を与えたかと言えば、流行当初は特効薬やワクチンがなく、簡単に治せない病気だったからです。未知のウイルスがもたらす死への恐れは人々の心を縛り、支配しました。死とは人が絶対に逃れることができないものです。だからこそ、死は恐れをもたらします。黙示録に登場する青白い馬は、死の象徴です。コロナ・ウイルスに対する恐れは、まさに青白い馬に支配されていく人類を表しているのかもしれません。
野獣~コントロールできないもの
人は何とか病気をコントロールしようとしてきましたし、ある意味、その試みは成功を収めてきました。医学はありとあらゆる病気に対して挑戦し、多くの成果を上げてきたのです。インフルエンザ・ウイルスも多くの人が罹患し、死者も出ますが、そこまで深刻な影響をもたらしていないのは、ワクチンと治療薬があるためです。ある意味、医学はインフルエンザをコントロールできていました。
しかしコロナ・ウイルスは、その医学をあざ笑うかのように世界を支配しました。一度感染し、重症化したら、確実に治せる方法がまだないのです。既に521万人(2021年11月時点)の命を奪ったこのウイルスに対して、医学は必死に抵抗しています。
ワクチン接種が進み、ある程度の成果を上げてきましたが、変異していくウイルスに対して、どの程度の効果をもたらすのか、またまた効果は未知数です。コロナ・ウイルスのパンデミックは、人間にはコントロールできない領域があることを教えているのです。
青白い馬は神の許しによって地上に登場します。これは人にはコントロールできないものです。終わりの時代、神は人類が高慢を捨て、神を恐れることを学ばせるために、死が闇のように世界を覆うことを許されます。人間の知恵はその力に対抗できず、圧倒的な存在感を放つ死の前にひざまずくしかないのです。コロナ・ウイルスは、まるで野獣のように社会の秩序を破壊したと言えるでしょう。
これは神の裁きですが、同時に希望でもあります。自分の力に絶望した時、人は神を頼るしかないからです。そして神に頼るなら、神は必ず助けてくれるのです。
まとめ
コロナ・ウイルスが青白い馬そのものを意味しているのかどうか、確定はできません。
しかし、ウイルスによって揺さぶられた社会の状況を見る時、ヨハネの黙示録の時代はすぐそこまで来ていることを感じることができるのです。
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