クトゥルフ神話に登場|最も有名な魔道書ネクロノミコンとは

ネクロノミコン A "Necronomicon" made by a Lovecraft fan.(Shubi,29 August 2004)
A "Necronomicon" made by a Lovecraft fan.(Shubi,29 August 2004)

クトゥルフ神話には、「魔道書」と呼ばれる禁忌の書物が数多く登場します。

ここでは、その中でも最も有名な魔道書「ネクロノミコン」についてご説明します。

クトゥルフ(BenduKiwi, 2006年7月30日)

クトゥルフ神話における魔道書

クトゥルフ
クトゥルフ(うにょっく/脳痛男

クトゥルフ神話とは、宇宙的恐怖とそれに対峙することになる人間を描いた物語です。

作中には、その宇宙的脅威について書かれた文献が数多く登場します。

これによって知識を得た人間が、旧支配者の復活を阻止したり、知ってはならぬことを知って命を奪われたりします。

物語の中でも、重要な情報を得るためのキーとなる存在ですね。

たとえば、クトゥルフ神話には下記のような文献が存在します。

  • クトゥルフに関して詳しく書かれた「ルルイエ異本」
  • ツァトグァを崇拝していたエイボンによって書かれた「エイボンの書」
  • 外なる神について書かれ、いまでは欠損してしまっている「セラエノ断章」
  • 最古となる魔道書「ナコト写本」

このような文献の中でも、最も多くの人に知られている魔道書が「ネクロノミコン」となります。

ネクロノミコンの誕生

ネクロノミコン A "Necronomicon" made by a Lovecraft fan.(Shubi,29 August 2004)
A “Necronomicon” made by a Lovecraft fan.(Shubi,29 August 2004)

最初にその魔道書に付けられていた名前は、「アル・アジフ」でした。

これは、「狂える詩人」と呼ばれるアラビア人「アブドル・アルハズラット」によって著されたものです。

その内容は、様々な魔法的奥義と宇宙的脅威の存在について書かれています。

書き記されてから220年後、アラビア語で書かれていた「アル・アジフ」はギリシア語に翻訳されます。

その際に、ギリシア語で「死体」「掟」「肖像」を意味する3つの言葉を利用し、「ネクロノミコン」という造語が作られ、タイトルとして使われるようになります。

本の内容が人類の常識を超越しすぎているためか、それとも邪悪な生命が宿っているためなのか、これを読むと多くの人が精神を狂わされてしまいます。

そこで、状況を重く見た総教主ミカエル・ケルラリウスは、ネクロノミコンを禁書とします。

しかし、禁断の知識を得ようとする者たちが存在し、密かにネクロノミコンを複製していました。

そして禁書処分より180年ほど経った頃に、ラテン語版ネクロノミコンが作成されます。

しかし、これもわずか4年後に再び禁書に。

このように二度も禁書処分にされたにも関わらず、ネクロノミコンは生き残ります。

その後も15世紀に入るとドイツ語とスペイン語版が、16世紀に入るとイタリアでギリシア語版が印刷されるようになりました。

17世紀になると、ラテン語版を元にした英語版が作られますが、内容の多くが欠損した状態から作ったため不完全な物となってしまいます。

そして現在、ハーバード大学、ミスカトニック大学、ヴェノスアイレス大学、パリ国立図書館の4箇所に17世紀のラテン語版、大英博物館に15世紀のラテン語版が保管されています。

しかし、その全てに欠損している箇所があるため、完全なネクロノミコンは存在しないと言われています。

と、ここまでが「ネクロノミコン」に与えられた「設定」となっています。

一冊の本に対して、こんなにも細かい設定が作られているわけです。

ネクロノミコンを現実に作ろうという動き

これだけ詳細の設定があり、クトゥルフ神話の中でもとりわけ有名だからこそ、なんとかネクロノミコンを再現したいという人たちが現れます。

たとえば、1978年にジョージ・ヘイが「魔道書ネクロノミコン」を出版しました。

これは、「ラテン語を英語版に翻訳したジョン・ディー博士の文書」を解読したもの、という設定です。

この中には「旧神の印」、「ヨグ=ソトースの召喚方法」なども記載されています。

そして2004年には、ドナルド・タイスンが「ネクロノミコン アルハザードの放浪」を出版しました。

これはネクロノミコンをほぼ完全に再現したと言えるもので、クトゥルフ神話の小説中に登場した「ネクロノミコンからの引用」を網羅しています。

完全な魔道書として作り上げたもので、決して読み物でも解説本でもありませんが、コレクターズ・アイテムとして非常によく出来たものです。

しかし、残念なことに重刷されていないため、新しく手に入れるのは困難になっています。

有名な再現は以上のとおりですが、これ以外にも多くのファンがネクロノミコンを作ろうとしています。

そのほとんどはオカルトっぽい装丁のものでしかないですが、これもネクロノミコンが人気だからこそ起こっている現象ですね。

他の魔道書にも光を

日本においては、「魔道書=ネクロノミコン」という認識が根付いています。

なぜそんなに人気なのかというと、やはり「内容が定かではない」ところにあるのでしょう。

全部で何章あって、何ページ目に何が書かれているといった具体的な描写はなく、作品によって断片的に「ネクロノミコンからの引用」としか登場しません。

その具体性がない点が、書き手にとっては便利なアイテムになるわけです。

ナイアルラトホテップが使い回されるのと同じ理由ですね。

もっとも、他の魔道書「ルルイエ異本」「ナコト写本」も、何について書かれているかまでは明記されており、具体的な内容については不明瞭なままです。

こちらもクリエイターにとって使い勝手は良いはずなのですが、いまひとつ人気がありません。

魔導書好きな私としては、なんとか他の書物も使われるようになって欲しいところです。

クリエイターのみなさん。作品に魔導書を登場させるときは、ネクロノミコンだけでなくぜひ他の魔導書も使ってあげて下さい。

魔道書たちに代わってお願いします!

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