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クトゥルフ神話好き必読!近くに行ってもお薦めしない町「インスマス」

Second Life上に再現されたインスマス(Torley from torley.com)
Second Life上に再現されたインスマス(Torley from torley.com)

クトゥルフ神話に登場する地名で最も知名度が高い場所、「インスマス」。

圧倒的知名度にもかかわらず、その情報は正しく伝えられていないことがあります。

いったいインスマスとはどのような場所なのか、なぜ注目されるのか。

このページで詳しく解説します。

インスマスの歴史

1643年にマサチューセッツ州エセックスに建設された港町、それがインスマスです。(もちろん架空の町です。)

独立戦争以前は造船で有名になり、1812年戦争前までは市と呼べるほどに栄えた大きな町でした。

しかし戦争と複数の船が座礁したことで多くの働き手を失い、町は衰退し始めます。

1846年には町で原因不明の疫病が広がり町の人口は半減、さらに1927年に行われた政府主導による極秘調査で大量の逮捕者を出し、インスマスは廃墟に近い町となったのです。

その後はゆっくりと復興していますが、現在の人口は400人いるかどうかで留まっています。

かつては造船、海運、漁業といった港らしい産業が中心で、一時期はマニューゼット河を利用した軽工業まで行っていました。

しかし、南北戦争後には金の精錬と漁業だけを残し、他は廃業に追い込まれます。

現在も産業らしいものはなく、たまに稼働している精錬所と漁業がこの町を支えています。

不思議な事に周囲の海に魚がいなくても、このインスマス周辺だけはいつも魚が豊富にいるようです。

では、このインスマス周辺はどのような立地になっているのでしょうか。

インスマスの立地

インスマスは、エセックスに流れるマニューゼット河の河口に作られた町です。

その周りは小高い丘と荒涼とした土地、そして広範囲に渡る塩性の湿地に囲まれています。

周囲を通りかかる車もないほどに寂れ、インスマスは事実上孤立しています。

町の東側は大西洋へ繋がっているのですが、沖合約2.5キロの位置に満潮時でも沈まない「悪魔の暗礁」と呼ばれる岩礁があり、港へ入るにはこれを大きく迂回しなければなりません。

かつては鉄道も通っていた町ですが、現在は廃線となり錆びたレールだけが残されている状態です。

したがってインスマスへ行くには、最寄りのニューベリーポートかアーカムからバスに乗るしかありません。

バスは1日2本しかなく、ニューベリーポートの発車は午前10時と午後7時のみとなっています。

料金は安く、ニューベリーポートからインスマス経由でアーカムへ行くのであっても、鉄道で直接行くより安上がりとなっています。

しかしニューベリーポートでは、バスでインスマスへ行くことを薦める人はいません。

それどころか、インスマスの存在を話したがらない人ばかりなのです。

なせ、そこまでインスマスは避けられているのでしょうか。

インスマスの住人が避けられる理由

ダゴン秘密教団の存在

ニューベリーポートやアーカムの人達は、インスマスに関わることを避けます。

理由をはっきり話す人は少ないのですが、インスマス人への態度に露骨に出ています。

インスマスの名前を出すと、多くの人は口を閉ざすか恐怖と嫌悪感を示すのです。

理由は、100年以上前の噂が原因です。

それは、当時有力者であった「オーベッド・マーシュ船長」が夜中に「悪魔の暗礁」で悪魔と取引し、出てきた小鬼をインスマスに住まわせたというものです。

また1845年には、マーシュ船長が人身御供を使った儀式を行っていた、という話も残っています。

それを裏付けるかのように、インスマスには「ダゴン秘密教団」というカルト宗教が存在し、町で唯一の宗教となっています。

しかもその開祖がオーベッド・マーシュ船長で、儀式を行ったと言われている日から再び町が活気づいているのです。

秘密教団と儀式、その後の経済復興。

それらに因果関係があると思われても仕方ありませんね。

住人の外見

インスマス系女子、インスマス顔
インスマス系女子、インスマス顔(douzen様

他の町の人々が最も嫌悪しているのが、住人の外見と動きにあります。

インスマスの年配者に見られるのですが、首の両側に深いシワがあり、細い頭にまばたきをしない膨れ上がった丸い目、小さな耳などの特徴があります。

また鼻が平らで額と顎が後ろに引いている者や、目の間が極端に離れている者が多く、魚やカエルを連想させる顔立ちとなっているのです。

一部ではこの特徴的な顔のことを「インスマス顔」や「インスマス面」と呼んでいます。

インスマス人の特徴は手足にも出ていて、歳とともに肥大化した足のため歩行が困難になっている者が大半を占めます。

インスマス人は全体的に強く生臭い魚の匂いをさせているため、姿が見えなくても匂いだけで近くにがいるとわかってしまうのです。

この顔や身体の特徴は、歳を取るか精神的ショックを受けたときに出るもので、20代までは普通の人間と同じ姿をして、同じように生活することが可能です。

そのため、何も知らない人間と結婚する者がいても不思議ではないのです。

インスマスの住人がこのような不気味な者ばかりになったのは、1845年頃からと言われています。

それは不思議な事に、マーシュ船長が儀式を行った時と一致するのです。

その時いったい何が起きていたのでしょう。

1846年に人口を半減させた疫病

1846年に、インスマスは謎の疫病に襲われたと記録されています。

しかしそれは事実と異なっています。

あまりにも恐ろしく常識はずれな事件のため、人に話しても妄想で片付けられてしまうのです。

オタハイト島の異教徒と海の魔神

1928年、インスマスの名家「マーシュ家」の1人「オーベッド・マーシュ」は、3隻の貿易船を使い太平洋や東インド諸島との交易を始めました。

そして、オタハイト島の東に住む異教徒からある情報を聞き出したのです。

その情報とは、「生け贄を捧げることで海の恵みを与えてくれる魔神」の存在でした。

異教徒達は海に住む魔神と取引をして恩恵を得る一方で、人間と魔神の混血を進めていたというのです。

マーシュはその恩恵に目をつけ、彼らと交易を始めることにしました。

その結果、彼は成功を収めインスマスで大きな力を持つようになりました。

しかし1838年、再びマーシュは異教徒の島へ訪れましたが、島は無人で完全な廃墟となっていました。

とうぜんマーシュは儲け口をなくし、インスマスの経済も停滞することになりました。

オーベッド・マーシュの儀式

マーシュの儲け口に便乗していたインスマスの住人は、交易がダメになったことに落胆し、キリスト教の神へ祈るようになっていました。

そんな住人を見たマーシュは悪態をつき、恵みを与えてくれる神々を知っている、そのためには住人の協力が必要だと言ったのです。

マーシュと共に島へ行っていた船員は、彼が何を言っているのかわかっていました。

しかし、住人の多くは彼の言っていることが理解できず、証拠を見せろと迫ったのです。

マーシュと手下は町にあるキリスト教会へ行き、そこにいる神父を町から追い出しました。

そして毎夜手下と共に悪魔の岩礁へ行き、異教徒からもらった飾りをつけ、異教徒から教わった魔神への取引を持ちかけたのです。

つまり町の誰かを生け贄として捧げ、その見返りを得ようとしたわけです。

これがオーベッド・マーシュが行った儀式です。

この時はまだ金儲けが目当てであって、魔神との混血を望んでいたわけではありませんでした。

マーシュの逮捕と謎の襲撃

海の魔神から得た宝や魚を元に、マーシュはさらに力を増していきます。

それにあわせて「ダゴン秘密教団」も大きくなり、フリー・メイスンの会館を買い取ってインスマス唯一の宗教団体としてのし上がったのです。

廃線になっていた鉄道もマーシュの力で再開され、インスマスの急成長を知った外部の者が訪れるようになりましたが、その者達はほとんどが行方不明となっています。

同様にキングスポートからの漁師もやってきていましたが、こちらも全員遭難して消息不明です。

あまりにも行方不明者が多いことと秘密教団の過激な活動展開に政府が動き、オーベッド・マーシュを含む32名が逮捕され、町の留置所へ入れられてしまいました。

ところがその2週間後、世間には「謎の疫病」と伝えられる事件が起きます。

それは夜にやってきました。

悪魔の岩礁に大量の魔神の群れが現れ、インスマスを襲ったのです。

応戦したものは殺され、行政官やマーシュ逮捕に加担したものも命を奪われました。

夜が明けたときには脱獄したマーシュと手を組んだ者か、恐怖で動けず大人しくしていた者だけが生き残っている状態でした。

この一夜の惨劇の結果、インスマスの人口は半分に減ってしまったのです。

インスマスを襲った魔神

インスマスを襲った魔神は、海に棲む旧支配者の眷属「深きものども」と呼ばれる存在でした。

もちろん、マーシュはその名前を知りません。

深きものどもは、人と子供を作ることで仲間を増やしていく異生物です。

この邪悪な者たちは仲間を増やし、自分たちの長でもある「父なるダゴン」と「母なるヒュドラ」に従い、旧支配者「クトゥルフ」の復活へ備えています。

クトゥルフ
クトゥルフ(うにょっく/脳痛男

マーシュを助けたのは仲間を増やす生け贄のためと、インスマスを拠点にするためでした。

インスマス襲撃のあとは混血化が行われ、生まれた子供はそのまま町に住み着いたのです。

当初は混血化を望んでいなかったマーシュですが、この頃には恩恵のためならと認めています。

それどころか自身も素性の分からない女と結婚し、3人の娘を儲けているのです。

混血児の中にはインスマス出身を隠し、アーカムやニューベリーポートで結婚した者もありました。

オーベッド・マーシュの娘1人もアーカムで結婚しています。

彼らやその子孫も「深きものども」の血を引いており、歳を取るとインスマス面となって「悪魔の岩礁」の下へ戻ると言われているのです。

悪魔の暗礁にあるもの

なにが悪魔の岩礁の下にあり、なぜインスマス人はそこへ帰るのでしょう。

オーベッド・マーシュが生け贄を捧げていた「暗黒の岩礁」から沖合側は非常に深くなっており、そこに「深きものども」が棲む「イハ=ンスレイ(Y’ha N’thlei)」と呼ばれる海底都市があるのです。

1927年に極秘調査の名目で政府の役人がインスマスに入った際、別行動をしていた海軍がこの岩礁へ魚雷や爆雷攻撃を行っています。

目的は明確にされていませんが、間違いなく深きものどもの殲滅でしょう。

しかしこの作戦は失敗に終わり、「イハ=ンスレイ」に損害を与えただけで深きものどもは全滅していませんでした。

いまなお彼らはイハ=ンスレイに潜み、クトゥルフ復活の日を待ち続けているのです。

インスマスを覆うもの

このインスマスを舞台にしたホラー小説「インスマスの影」は、H・P・ラブクラフトが生きている時に出版された唯一の単行本でした。

それまでに発表された「クトゥルフの呼び声」、「ダンウィッチの怪」と合わせて、クトゥルフ神話を決定づける重要な作品でもあります。

作中に登場するインスマス、アーカムは架空の都市ですが、クトゥルフ神話との関連を見せる作品ではよく登場する名所となっています。

特にインスマスは、神話中でも数少ない宇宙的脅威と人間の混血が巣食い、普通の人間が宇宙的脅威と接してしまう奇妙で危険な町として取り上げられることが多いのです。

廃墟同然で、住人が魚類や両生類を思わせる姿をしていて、沖合に怪しい岩礁があって、よく行方不明者が出る町、本当にあったとしても立ち寄りたくない名所です。

けっしてお薦めできる観光地ではありません。

物語の中だけに留めておきたい町ですね。

なお、こちらの『ラブクラフト全集1』に、上述の「インスマウスの影」が収録されています。気になった方はご覧ください。

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