クトゥルフ神話に影響を受けたゲーム:ドラゴンクエスト編

クトゥルフ

国民的なゲーム作品である、「ドラゴンクエスト」シリーズ。

モンスターや神などが多数登場する作品ですが、中には実在する神話から引用されている部分も見られます。

有名な「クトゥルフ神話」も例外ではありません。

この記事では、ドラゴンクエストがクトゥルフ神話に影響を受けたポイントをご紹介します。

ドラゴンクエストとは?

いまや、その名を知らない者はいないというほどの人気シリーズ「ドラゴンクエスト」。

一作目は、エニックス(現スクウェア・エニックス)から発売された日本初のRPGです。

アクションゲームが主流だった当時、初代「ドラクエ」の発売は衝撃的でした。

勇者が冒険に出て、数々の戦いをし、最後にはボスである魔王を倒す。

この王道のストーリーが、日本ゲーム業界にRPGというジャンルを根付かせるきっかけとなりました。

ドラゴンクエストにちらばるクトゥルフ神話

クトゥルフ
クトゥルフ(うにょっく/脳痛男

本題に入る前に、まずはクトゥルフ神話について解説します。

クトゥルフ神話とは、もともとは小説に登場する設定です。

アメリカの幻想・怪奇作家、ハワード・フィリップス・ラヴクラフトが作りだした架空の神話で、「古来の地球に飛来した旧支配者が、現代によみがえる」というのがクトゥルフ神話の基本。

旧支配者のほかに、旧神・外なる神なども登場します。

クトゥルフ(BenduKiwi, 2006年7月30日)

このクトゥルフ神話の重要なポイントが、「大いなる存在の恐怖」です。

簡単にいえば、「大いなる存在にとって、人間はアリ程度の認識に過ぎない」ということです。

例えば人間がアリを踏み潰しても、罪悪感に苦しむことは少ないでしょう。

しかしアリにとっては、突然、正体不明の生物に殺された事になります。

生き残ったアリも何が起こったのかを理解することはできません。

分かるのはただ1つ、すなわち「無残な姿になった仲間の死体」だけです。

このように、「大いなる存在の前には、人間の存在や価値観に何の価値もなく、意志疎通も理解も出来ない何者かの恐怖に晒されている」という恐怖をあらわしているのがクトゥルフ神話の特徴です。

ラブクラフトはこの恐怖感を「宇宙的恐怖(コズミックホラー)」と名づけ、自身の理想としていました。

この宇宙的恐怖をより強烈に描こうとして、クトゥルフ神話を創作したとされています。

後にオーガスト・ダーレスをはじめとした複数の作家によって広められ、現在では1つの神話として体系化されています。

そうして海外のみならず日本でも有名となったクトゥルフ神話は、数多くのゲーム作品に影響を与えています。

もちろん、ドラゴンクエストも例外ではありません。

とくに、ゲームに登場するモンスターには、クトゥルフ神話由来のものが多いです。

スライムのベースはクトゥルフ神話の生物

A Shoggoth. Nottsuo's artwork inspired by H .P. Lovecraft's short novel At the Mountains of Madness.
A Shoggoth. Nottsuo’s artwork inspired by H .P. Lovecraft’s short novel At the Mountains of Madness.原典

ドラゴンクエストの代名詞といえる「スライム」も、クトゥルフ神話の生命体「ショゴス」がルーツです。

クトゥルフ神話でショゴスとは、体がドロドロの不定形で外見を自由に変える特性を持っています。

「ドロドロの不定形」。これはまさに、スライムの特徴ですね。

ドラゴンクエストだけでなく、ファンタジー作品に登場するスライムは、元を辿ればショゴスの影響を大きく受けているといえます。

今ではスライムといえば、鳥山明先生の手腕によりほぼ定形生物のような愛嬌のある外見となっています。

しかし、もともとはこんなドロドロの不定形生物だったのです。

さらに、ショゴスはクトゥルフ神話の中でも下級の種族で、上級種族に奉仕する奴隷として描かれています。

ドラクエのスライムも下級のモンスターです。

真っ先に勇者から倒されるという役回りも、ジョゴスの姿と重なりますね。

クトゥルフ神話そのままのモンスター「シャンタク」とは?

シャンタク鳥
シャンタク鳥(うにょっく/脳痛男

「ドラゴンクエストモンスターズ1」で初登場したモンスターに「シャンタク」がいます。

鳥系の上位モンスターで、西洋のドラゴンのような体つきと長い首が特徴です。

こちらは、クトゥルフ神話の「シャンタク鳥」から名前が取られています。

シャンタク鳥はクトゥルフ神話における「ドリームランド」(夢の世界。現実世界は「覚醒の世界」という)に住む生物です。

宇宙空間を飛行でき、人間の言葉を理解する能力を持っています。

注目すべきはその外見です。

シャンタク鳥は馬のような頭と巨大な翼を持つ、鱗の付いた怪鳥です。

その外見は、ドラクエのシャンタクと瓜二つ!

名前はもとより、外見もドラクエのシャンタクに近いということは、デザインの段階でクトゥルフ神話をベースにしたものと予想できますね。

タコ型モンスターのダゴンも、クトゥルフ神話が由来

クトゥルフ神話の有名な神は、タコのような触手を持つものが多くいます。

その生理的な恐怖を覚えさせる禍々しさたるや、まさに「名伏しがたき者」というにふさわしいです。

さて、ドラクエにおけるタコといえば「ダゴン」です。

ダゴンは「ドラクエ4」・「ドラクエ7」・「ドラクエモンスターズ1」の3作品で登場するタコ型のモンスター。

初登場時はHPが高いだけで怖さがありませんでしたが、「ドラクエ7」では呪文を封じる特技や回復技を持っており、「ドラクエモンスターズ1」では高ステータスで心強い味方になるモンスターでした。

そして、クトゥルフ神話にも「ダゴン」という神が存在します。

こちらはタコではなく半漁人ですが、海つながりでタコのモンスターに「ダゴン」と名づけているようです。

クトゥルフ神話のダゴン
クトゥルフ神話のダゴン(Dagon by Mario Zuccarello

ちなみに、「ダゴン」はクトゥルフ神話がオリジナルではなく、もともと中東に伝わるカナン神話の神です。

カナン神話のダゴンは海の神とする説と、農耕の神とする説の2つがあります。

渋く凛々しい姿なのですが、今ではクトゥルフ神話の半漁人姿の方が有名になってしまっている、なんとも気の毒な神様です。

ドラゴンクエストの戦士ハスター、実は強大な邪神?

ハストゥル
ハストゥル(ハスター、douzen様画)

「ドラゴンクエスト4」に登場する戦士に、「ハスター」という名前のキャラがいます。

初登場時は無名で、プレイステーションでリメイクされた際にハスターと名づけられました。

クトゥルフ神話にも「ハスター」という邪神が存在します。

クトゥルフ神話で有名な「名状しがたきもの」というフレーズは、本来ならハスターのみを指す言葉。

その名のとおり、ハスターの外見はまったく明かされていません。

宇宙空間を自在に駆け回る能力を持ちますが、現在はおうし座の星の1つに幽閉されています。

人間に憑依することも出来るのですが、憑依された人間は手足の骨が無くなって軟体生物のようになり、体中に鱗を持つ外見に変貌してしまいます。

ドラクエの戦士ハスターとは名前以外に共通点が無いため、ほとんど関係が無い……そう思う人も多いでしょう。

ところが、クトゥルフ神話のハスターが持つ特徴として、「人前に現れるときは化身の姿で現れる」というものがあります。

黄色いローブをまとった化身「黄衣の王」が有名ですが、他にもさまざまな化身を持つとされています。

もしかしたら、ドラクエに登場する戦士姿のハスターも、化身なのかもしれません。

まとめ

いかがでしょう。「ドラゴンクエスト」に引用されているクトゥルフ神話の中から、とくにモンスターやキャラクターに焦点をあててみました。

クトゥルフ神話は、あらゆる作品へ影響を与えています。

やはりミステリアスなテイストが、ファンタジー作品と相性が良いからでしょう。

クトゥルフ神話は小説のフレーバーとして使われていましたが、今ではしっかりと設定が固められ、読み物としても面白いものとなっています。

ファンタジー作品が好き人なら、ぜひ触れてみることをオススメします。

ゲームをプレイする人
Illustration by Hugh Rankin of a scene of H. P. Lovecraft's "The Call of Cthulhu". First published in Weird Tales (February 1928).

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