映画『アルゴ探検隊の大冒険』ギリシャ神話のモンスター、ハーピー・ヒドラ・スケルトンなどが集結

星図に描かれたアルゴー船(ヨハネス・ヘヴェリウス)
星図に描かれたアルゴー船(ヨハネス・ヘヴェリウス)

いきなりですが、ギリシア神話は好きですか?

特にハーピーやらヒドラやらといった、ギリシア神話に出てくるモンスターの類は好きですか?

好きな方には、是非オススメしたい映画があります。

『アルゴ探検隊の大冒険』、1963年の作品です。

「半世紀も前の映画なんてダイジョーブ?」と思った方もいるかもしれません。

大丈夫、オススメします!

「半世紀も前の映画だから」大丈夫なのです!

この映画を作ったのは、特撮映画の神様と呼ばれたレイ・ハリーハウゼン。

昔なつかしい、人形コマ撮り特撮のパイオニアです。

俳優さんの演技をあらかじめ撮影し、モンスターの人形をコマ撮りした映像を後から合成するというもの。

現代ではすっかりCG技術にとってかわられましたが、これをあえて今みると、おそろしく手間がかかっている撮影の分、作り手たちの意気込みや、人形のちょっとした動きに対する細かいこだわりが伝わってきて、職人技を凝らした伝統工芸品の工房を見学しているような感動があります!

何しろ、このレイ・ハリーハウゼンという方の作品、登場するモンスターひとつひとつに、作り手の愛情が乗り移っているようで、
実にあったかいものを感じるのですよね。

『アルゴ探検隊の大冒険』とはこんな映画

この映画は、ギリシア神話の中でも有名な「金羊毛を巡る冒険」を扱っています。

ギリシャの英雄イアソンが、「アルゴ号」という船を作り、仲間をつのって航海に出て、伝説の「黄金の羊の毛皮」を手に入れるまでの冒険物語です。

このイアソンに同航した仲間たちは、「アルゴノート」と呼ばれます。

英語圏のSFやファンタジーでは、よく「アルゴ号」とか「アルゴノート」といった名前をつけられた宇宙船やキャラクターが登場しますが、このギリシア神話がモトネタなのです。

そのアルゴノートにはどんな人が加わっていたのかというと、超人ヘラクレスやら、冥府下りで有名なオルフェウスやら、ふたご座の星座として有名なカストルとポルックス兄弟やら。

いわばギリシア神話の有名人たちの、オールスターチーム!

ヘラクレス
ヘラクレス(Hendrik Goltzius, The Giant Hercules)

「でも、ヘラクレスの物語やオルフェウスの物語との、時間軸上の関係はどうなっているの?」

「微妙に年齢計算があわないんじゃない?」

などと思った方!

そんな細かいことに気を取られているようではギリシア神話ファンとしてまだまだ若い!

そんなことはどうでもいいのです。

スナオに「ヘラクレスもいればオルフェウスもいる。 すげー!」と感動してのめりこめばよろしい。

この映画の英題は、『Jason and the Argonauts』、「イアソンとアルゴノートたち」。

私はこの映画に出会ったおかげで、「イアソンって、英語圏ではジェイソンって呼ぶんだ」と知りました。

これはこれでトリビア。

そのイアソンとアルゴノートたちが、航海の行く先々の島でモンスターの襲撃を受け、ひとつひとつの艱難苦難を乗り越えていくところが物語の見どころです。

映画では、次々に襲いかかってくるモンスターたちが、あったかい職人芸によるコマ撮りで見事に表現されている、というわけです。

どんなモンスターが出てくるか、ざっと紹介しますね。

モンスターその1:タロス像

タロス(クレタの銀貨)

巨大な青銅の像。

最初はただのバカデカい彫刻かと思いきや、いつのまにか人間たちのほうを振り向いており、「あれ?」と思わせるのが伏線。

やがてゆっくりと台座から降りて、襲いかかってきます。

あえてロボットのような、ぎこちないモーションを意識した特撮になっていて、おそろしくも、どこか、カワイイです(笑)。

モンスターその2:ハーピー、ないし、ハルピュイア

ハーピー
ハーピー(G.River

これはギリシア神話の定番モンスターですし、日本のアニメやゲームのキャラとしてもすっかりおなじみですね。

半人半獣のハーピーです。

メディアによってはギリシア原語の「ハルピュイア」で出てくることも多いです。

この映画では、コウモリ人間のような、不気味で憎たらしいバケモノとして登場します。

「悪夢に出てきそうな」という感じでしょうか。

でも、やはりちょっとカワイイ。。。

モンスターその3:ヒドラ

『ヘラクレスとレルナのヒュドラ』(ギュスターヴ・モロー)
『ヘラクレスとレルナのヒュドラ』(ギュスターヴ・モロー)

これまた定番モンスターですね!

たくさんの頭を持つ大蛇、ヒドラです。

この映画では、ヘビというよりはドラゴンに近いデザインで登場します。

これだけたくさんの首が複雑に動き回るモンスターをコマ撮りしていたその手間のかけぶりに、ただただ頭が下がります。

モンスターその4:スケルトン軍団

『死の舞踏』(ミヒャエル・ヴォルゲムート)
『死の舞踏』(ミヒャエル・ヴォルゲムート)

クライマックスに登場。

本稿のライターもこれを初めて見た時には狂喜した、出色の出来のモンスターです。

人間の俳優たちと、複数のスケルトンが、集団戦をやるのですね。

一人の俳優と一匹のスケルトンを一対一で格闘させるだけでも、この当時の合成技術ではたいへんな打ち合わせと計算と手間が必要だったと思いますが、レイ・ハリーハウゼンさん、この映画では「多対多」の集団戦にチャレンジしています。

結果としては、もう最高!

現代のCG技術と比較すると、どうしても「多少のアラ」が残るのですが、それがむしろ、手作りのあったかさを感じさせてくれます。

私、レイ・ハリーハウゼンさんのファンで、彼の作品は相当みているつもりですが、彼のキャリアの中でも、この「人間複数 対 スケルトン複数」の大チャンバラこそが、会心の出来となっているのではないか、と思っております。

まとめ:この映画に小学生で出会ってしまった本稿のライターは・・・

本稿のライターは小学生の時、年末に衛星チャンネルで流れていたこの映画を初めて見ました。

一発で気に入ってしまい、たまたま父親がビデオに録画してくれていたので、元旦からこの映画を再視聴。

結果としては、お正月の三が日を、ひたすらこの映画を再視聴しまくることで消化しきってしまったほど、気に入ってしまいました。

思えば私がギリシャ神話好きになったきっかけのひとつが、この映画との出会いのかもしれません。

というわけで、この名作、ギリシア神話好きな方には、ぜひ機会を見つけて鑑賞いただきたいと思います!

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