ロマンあふれる神話・伝承を電子書籍で。

神話の舞台を現代ギリシャに訪ねる:ミケーネ遺跡と黄金のデスマスク

アガメムノンのマスク
アガメムノンのマスク(DieBuche、原典

本稿のライターは少年時代にギリシャに滞在していたことがあり、その思い出から現代ギリシャのオススメスポットを紹介する連作記事を、続けさせていただいています。

今回の原稿では、特に少年期の私の度肝を抜いた、ミケーネの遺跡について紹介します。

そしてそのミケーネで発見され、「ギリシャの代表的な出土品」として教科書などによく写真が出てくる、有名な「黄金のデスマスク」の正体にも迫ってみましょう!

あのトロイア戦争の英雄が統治していた都市?!ミケーネ遺跡の迫力はとにかく凄い!

ペロポネソス地方
ペロポネソス半島にあるペロポネソス地方の場所

ミケーネとはペロポネソス半島にある、世界遺産にも登録されている「ミケーネの遺跡群」を有する地名となります。

考古学的には、我々が「古代ギリシャ」と聞いたときに想像する、アテネを中心としたポリスの黄金時代よりも、さらに昔にさかのぼる古代文明の遺跡となります。

そもそも「古代ギリシャ人」たちがどこからやってきたのかを遡るための遺跡として重要です。

このミケーネの遺跡を考古学的に調査すればするほど、我々がイメージしている「民主主義の都市国家」とはまったく別の、中央集権的な王国が存在していたことがわかってきています。

古代ギリシャも、最初は強力な王権国家からスタートしたのですね。

いっぽう神話関連のテーマでは(こちらのほうが我々の気を惹くところですが!)、このミケーネの遺跡は、トロイア戦争に登場するギリシャ側の英雄の一人アガメムノンが治めていた王国の遺跡とされています。

ここから出土した、王族のものと思われる黄金のデスマスクは、「アガメムノンのマスク」と呼ばれ、ギリシャを代表する出土品としてアテネ国立考古学博物館に保管されています。

神話に登場する人物の死相をかたどったマスクが、現代でも博物館で見られるなんて!

アガメムノンのマスクは発掘者シュリーマンの勇み足?けっきょく誰のマスクなのかしら?

アガメムノンのマスク
アガメムノンのマスク(DieBuche、原典

私もアテネの考古学博物館へ行ってこのマスクを見たことがあります。

こちらのマスク、確かに精悍な顔つきの男性の顔をとったマスクであり、「これがアガメムノンの素顔である!」と言われると、なんとなく納得感があります。

ただし残念ながら、プロの考古学者たちの研究では「これは確かに素晴らしい出土品だが、別にアガメムノンの顔ではない、そんな証拠はどこにもない」というのが定説になっています。

だいいち、トロイア戦争のモデルとなった戦争があったと推定される年代より、このマスクの製作年代はさらに三百年くらい昔らしいのです。

このデータは決定的、アガメムノンとはまったく関係がなさそうですね。

どうしてこのマスクが「アガメムノンのマスク」と呼ばれてしまっているのか?

実はこのミケーネ遺跡を発掘したシュリーマンという人は、「子供の頃に読んだトロイア戦争の神話に憧れて、ギリシャで続々とトロイア戦争時代の遺跡を発掘し、少なくともトロイア戦争のモデルとなった戦争が実際にあったことは確実と証明した」人物です。

ハインリヒ・シュリーマンの肖像
ハインリヒ・シュリーマンの肖像(原典

夢をあきらめない人の典型として、伝記やドラマになったりすることもある人なので、知っている人も多いかもしれません。

このシュリーマンという人、遺跡発掘の実績は素晴らしい人なのですが、トロイア戦争への愛が強すぎて、よく考えずに「これはトロイア戦争に登場する〇〇のものに違いない」と勝手に断定することが多い。

このシュリーマンが、黄金のマスクが出土したとき、「アガメムノンのマスクが出てきたー!」と大騒ぎしたことから、あのマスクは「アガメムノンである」と定着してしまった、そういう経緯です。

でも少年時代の私にとってはそんな経緯はあまり関係なく、あのマスクの顔こそ「アガメムノンの顔だ!」と信じきっていましたし、ミケーネの遺跡を訪れたときに「当時のお風呂場である」と説明された部屋では、「ということは、アガメムノンはここで殺されたのだ!」と興奮して写真を撮ったのを覚えています(※アガメムノンは入浴中に暗殺されて命を落としたと伝えられているので!)。

ミケーネの凄さは「古代の町がまるまる遺跡」として遺っていること!

ミケーネ:ライオンレリーフの門
ミケーネ:ライオンレリーフの門(David Monniaux、the lion gate at Mycenae、原典

そのような謎を残したまま、黄金のデスマスクはアテネの考古学博物館で今日も静かに眠っています。

ギリシャを訪れた際は、ぜひまずは考古学博物館でデスマスクを見学し、このアイテムのもつ数奇な運命に思いを馳せてから、ミケーネに出かけてみてください。

ミケーネの遺跡群は、古代の王国の城壁や街並みがかなり精巧に残されている、圧倒的な迫力の遺跡となっています。

私が特に好きなのは、ライオンズゲート(獅子の門)と呼ばれる、二頭のライオンのレリーフが彫られた門のところです。

このような壮観な門を古代王族や貴族たちがくぐって生活していた日々が、実際にかつてここにあったのだ、と思うと、目が回りそうな感動を覚えました。

このような壮大な遺跡の中に立つと、確かに気分が舞い上がってしまうところがあり、シュリーマンがここで出てきた黄金のマスクを「神話のアガメムノン王のものだー!」と(冷静な根拠もなく)飛びついてしまった気分も、わからなくもないところがあります。

それにしても、けっきょく、あの黄金のマスクのハンサムな死に顔は、誰の顔なのでしょうね?

言われてみると、なんだか現代人の狂騒をどこかであきれて笑っているような表情にも、だんだん見えてきます。。。

この記事をシェア

ロマンあふれる神話・伝承を電子書籍で

ゲームや漫画、映画などエンタメ好きにも読んで欲しい編集部厳選の神話・伝承をAmazon kindleで販売中

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です