知っているようで実は知らないことの多い国、ニュージーランド。
そんなニュージーランドも、最近はラグビー人気の高まりのおかげでずいぶん身近になってきました。
ところでラグビーのニュージーランド代表チームは、試合開始前に独特のダンスを踊って相手チームへの挨拶および観客へのアピールを行うのが伝統となっています。
彼らが試合前に踊るのが、「ハカ」と呼ばれる踊り。
この「ハカ」ですが、実はニュージーランドの先住民族マオリ族の伝統舞踏。
この踊りがラグビーのナショナルチームに継承されている背景には、先住民族マオリ族の文化を尊重していこうという、という
現代ニュージーランド社会の意気込みが感じられます!
Contents
マオリ族とヨーロッパ人の悲惨な殺戮の歴史

ニュージーランドがヨーロッパ人によって発見されたのは、17世紀のこと。
18世紀~19世紀にかけて、イギリスによる植民地経営が本格的に始まります。
しかしニュージーランドには既にマオリ族という先住民がおりました。
アメリカ大陸やオーストラリア、および他の太平洋の諸島でも起こったことが、ここでも繰り返されます。
最初は友好的なムードもあった先住民と植民者たちの間では次第に利害の対立が高まり、十九世紀半ばに「マオリ戦争」が始まります。
蜂起したマオリ族と、それに対抗するイギリス軍の間の戦争は12年にもわたり、最終的にはイギリス側の勝利となりましたが、双方に深刻な犠牲が出たのでした。
ニュージーランドの先住民族マオリ族の神話とは?
ところでこのマオリ族の人たちは、いったいどこからニュージーランドに来たのでしょうか?
これには、二つの可能性が考えられます。
もともと太古の時代からこの島にいた人々であるという可能性と、マオリ族もまた世界史の流れのどこかで、別の地域から海を渡ってやってきた移民であるという可能性です。
マオリ族自身は、自分たちをどう考えていたのでしょうか。
こういうときに役に立つのが、「神話」なのです!
彼らの文化に口伝されてきた神話によると、「われらの祖先は舟に乗って海を渡ってやってきた」とのこと。
頭の固い学者たちは「神話など何のアテにもならん」と否定的でしたが、最近、DNA研究や比較文化研究が進んだことで、どうやらマオリ族は周辺の太平洋諸島のポリネシア人とルーツが同じことがわかってきました。
決定打となったのは、「古代のカヌー技術で太平洋を長期間航行することはできない」という定説が、20世紀後半に、古代のカヌーを再現して太平洋を横断するという実証実験の成功で、根本からくつがえされたこと。
更に、マオリ族の神話と、環太平洋諸国の神話を比較することで、東アジアの台湾から、東南アジア、アメリカ大陸、さらにはアフリカのマダガスカル島までを結ぶ、古代の「神話の拡大ネットワーク」の痕跡が、仮説として見えてきたのです。
古代の太平洋にはカヌー航行による移民ブームがあり、おそらくはマオリ族も、島から島、またその島から別の島へと、何千年もかけて動いてきた移民の末裔なのです。
このお話、科学的な実証に「神話」がじゅうぶん役に立つという、ひとつの重要な事例としても注目すべきケースといえるでしょう。
マオリ族の伝統が見直された!小学校ではマオリ語の授業が必須になっているという驚き!

こうしたマオリ族の文化は、イギリスの統治下で衰退していきました。
しかし近年、ニュージーランドではとても興味深い運動が起こっています。
このマオリ族の文化こそが「ニュージーランド人のアイデンティティーである」という解釈が広がり、国のシンボルやアートの世界で、「マオリ的な意匠」が好んで使われるようになっているのです。
そればかりではなく、衰退したはずの「マオリ語」を公用語として復興させようという動きがニュージーランド政府の主導によってグイグイと推進されています。
現在マオリ語は、ニュージーランドの小学校での必修授業となっています。
アイルランドのように、一度英語圏に征服された人たちが、自分たちの先祖の言語を学校教育に復活させた、という事例はあります。
しかし支配者たち(ヨーロッパ人)のほうが、一度征服した先住民たちの言語を自分たちが守るべき文化遺産と認め、子供たちの教育に積極的に取り入れたというのは、珍しいケースではないでしょうか?
かくしてマオリ族の伝統的な踊り「ハカ」もラグビーのニュージーランド代表の伝統的なパフォーマンスとして復活し、尊重されているという経緯です。
異文化の尊重、歴史の尊重という点で、とても理想的なモデルケースと思うのですが、いかがでしょうか?
「ハカ」を踊るニュージーランド代表に、自国の民族舞踊で対抗するチームも出てきた!
この「ハカ」ですが、ニュージーランドの人たちはとても大事な伝統と考えていて、お笑い番組やテレビCMでふざけた使い方をすると、厳重な抗議がくるそうです!
日本の少し昔のテレビでは、「ハカ」をパロディにしたCMなどがいろいろあったと記憶していますが、今そういうことをやる場合は、かなり気をつけて、ニュージーランドの方々を傷つけないようにしないといけません。
ところでラグビーで踊られる「ハカ」には、これまた面白い話もあって、これをパフォーマンスとして仕掛けられた相手側のチームが、自分たちの国の伝統舞踊を踊ってやり返す、というケースが何度か発生したそうです。
特に凄いのが、ニュージーランド代表の「ハカ」に、トンガ代表が「イカレタヒ」で応戦したケース。
スタジアムの観客も大熱狂の拍手喝采で、おおいに盛り上がった「試合前パフォーマンスタイム」。
ネットで「ハカバトル」と検索すると、この「ニュージーランドVSトンガ」を含めていろいろ出てきますので、興味のある方はぜひ調べてみてくださいね!
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