- 種別:聖なるアイテム
アーサー王物語の中盤から後半の山場の主役といっていいアイテム。大元はケルトの魔法の大釜であるらしい。
聖杯

ヴィヴィアンに幽閉されたマーリンが、ガウェインを通じてアーサーに捜索するようにと伝えたアイテム。
日本では便宜的に「杯」と訳されているが、実態はもっと漠然とした「器」であると考えられている。
物質的存在であるかどうかすら怪しい。
英語においては、教会の儀式で使用する聖杯(Chalice)とは別に「Holy Grail」という言葉を当てている。
元々はケルトの伝承などに現れる魔法の大釜であったらしい。
中に人を入れて煮ればその人がよみがえるなどといった伝承もあるので、地母神の子宮を象徴する祭具だったのだろう。
中世になると、この聖杯を求めて各地をさまよう騎士たちの物語が書かれるようになる。
これが最終的にアーサー王伝説に組み込まれ、現在の形になったのである。
この結果、「聖杯物語」の独立の主人公であったはずのパーシヴァルは、円卓の騎士に組み込まれるようになる。
騎士物語の題材として描かれる過程で、聖杯は元の非キリスト教的アイテムから、キリスト教の聖遺物へと変化していく。
「魔法の大釜」がいつの間にか、最後の晩餐で使われ、処刑されたキリストの血を受けた器に変化したのだ。

聖遺物としての聖杯は、十字架上でのキリストの死を確認するために使われた槍(ロンギヌスの槍)と対になるものと見なされるようになった。
マロリーの物語においては、聖杯を得るのはパーシヴァルに変わって聖杯の騎士の座を得たガラハッドで、彼は1年かけて聖杯を聖地に運び、そこで聖槍・聖杯とともに昇天する。
なお、アーサー王伝説の元になったと思われる事件は5世紀のものだが、聖杯伝説の時代背景は明らかに十字軍の頃のものである。
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