「もしも自分の性別が、実際のものとは逆だったら…」 なんて考えたことはありませんか?
誰しも一度は「自分が男だったらよかったのに」とか、「女性になりたいなぁ」なんて考えたことがあるのではないでしょうか。
じつはギリシア神話には、意外な方法で男女両方の性を経験した人物が登場するのです。
テーバイの預言者・テイレシアース
テイレシアースは、ソフォクレスの『オイディプス王』などに登場する、ギリシア神話の人物です。
盲目の予言者で、ギリシア神話の様々なエピソードに登場します。
特に『オイディプス王』では、テーバイの衰退がその王であるオイディプス本人にあることを告げるなど、キーパーソンとして活躍しています。
さて、そんなテイレシアースが、なぜ性転換するに至ったのでしょうか?
山で蛇を叩いたら性別逆転
元々テイレシアースは男性でした。
ところがある日、彼はキュレーネー山の中で交尾している2匹の蛇を見つけます。
それを杖で叩いたところ、なんとテイレシアースは女性になってしまったのです。
彼(彼女?)は女性となったまま、実に9年(7年とも言われます)もの年月を過ごすことになります。
そしてある時、テイレシアースは再び交尾している蛇を見つけます。
それを杖で叩くことで、彼は男性に戻ることができました。
それにしても、何とも奇妙な方法で性転換してしまったものです。
性転換のせいで盲目に…?
ところで先ほど、テイレシアースについて「盲目の予言者」とご紹介しましたが、どうも生まれつき盲目であったわけでも、また予言の能力を持っていたわけでもないようです。
ある時、ゼウスとヘラが「性交の時の快楽は、男女どちらが大きいか」ということについて議論を始めました。
ちなみにゼウスとヘラはギリシア神話に登場する神様で、ゼウスは神々の主神、ヘラはその妻です。

,アンニーバレ・カラッチ,1597年)
さて、この議題にゼウスは「女の方が大きい」、ヘラは「男の方が大きい」とそれぞれ主張し、決着がつきません。
そこで、男女両方を経験したテイレシアースに意見を求めることになりました。
テイレシアースはその問いについて、「女の方がずっと大きい」と答えました。
するとヘラがこの答えに怒って、彼を盲目にしてしまったのです。
質問に答えただけなのに、これではあまりに気の毒…とゼウスも思ったのでしょうか、目が見えなくなった代償として、テイレシアースに予言の能力を授けました。
ちなみに、テイレシアースが盲目の予言者となった理由には諸説あり、女神アテナの沐浴姿を見てしまったために、目を見えなくさせられてしまった、という話もあるそうです。
この場合は、アフロディーテ、またはアテナ本人がテイレシアースに予言の能力を授けたと言われています。
波乱万丈な人生に憧れる?敬遠したい?
現代でも性転換は不可能ではありませんが、テイレシアースほど奇怪な方法で性別を換えた人はいないでしょう。
おまけに、そのために盲目になり、予言の才能を身につけるとは、本人も予想しえなかったことではないでしょうか。
「多くの人とは違う人生」を送る人に対して、憧れを感じる人は多いでしょうが、テイレシアースの場合はあまりに奇妙で波乱万丈。
真似したいと思う人は少ないかもしれません。
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