スタバのロゴの女性は何者?調べたらギリシア神話のセイレーンが由来だった!

スターバックスのロゴ(セイレーン)
スターバックスのロゴの変遷(マイナビニュースより引用

みんな大好き?スターバックスコーヒー(以下スタバ)。

1971年にアメリカで誕生、日本でも1996年の第1号出店以来、カフェブームの火付け役として不動のブランドを築き上げて来ました。

スタバと言えば、星の冠をかぶったウェーブヘアの女性がロゴマークとなっていますが、彼女はいったい何者なのでしょうか。

調べてみると、ギリシャ神話に登場する怪物「サイレン(Siren。英語読み)」に由来するそうで、今回はこちらを紹介したいと思います。

サイレン(セイレーン)とは

セイレーン像
紀元前330年頃のセイレーン像(アテネ国立考古学博物館所蔵、原典

セイレーンが登場するのは吟遊詩人・ホメロスの叙事詩『オデュッセイア』。

主人公のオデュッセウスが海を渡ろうとした時、必死に止める者がありました。

「海路を行くのはおよしなさい。この先には怪物が棲んでいて、生きて渡れた者はおりません」

冒険好きな英雄オデュッセウスは、そう聞いてますます行きたくなって訊ねます。

「ほぅ、それはどんな怪物だ?」

「はい。顔は美女なのですが、首から下は鳥の姿をしており、不思議な歌声で人々を惑わして海に飛び込ませ、ついには溺れ死なせてしまうのです。わしらは彼女たちを『セイレーン』と呼んでおります」

普通の人なら、ここで「それじゃあ陸路を迂回して行こう」と思うのですが、英雄ともなれば当然反応が違いました。

「なるほど、セイレーンか。それは是非とも聞いてみたいものだ……よし!」

一計を案じたオデュッセウスは、セイレーンの歌を聞いても海に飛び込めないように自分の身体を船のマストに縛りつけさせ、他の者は耳栓をさせておきます。

「さぁ、どんな美女たちが出迎えてくれるのかな?歌声も楽しみだ!」

かくして出航したオデュッセウス一行は、さっそくセイレーンたちの大歓迎を受けました。

セイレーンの数には史料によって諸説あり、メンバーそれぞれに名前があるようです。

【セイレーンのメンバー】

  1. ヒ-メロペー(優しい声、の意)
  2. テルクシエペイア(魅惑的な声、の意)
  3. ペイシノエー(説得力ある、の意)
  4. アーグラオペーメー(美しい声、の意)
  5. レウコーシアー(白、の意)
  6. リゲイア(金切り声、の意)
  7. パルテノペ―(乙女の声、の意)……等々。

「ラララ~♪」

「おぉ……確かにこれはもっと近くで聴きたくなるぞ!ぐぬぬ……」

オデュッセウスは自分の意思とは無関係に、どうにか縄から抜け出そうと暴れ出し、周囲の者たちは必死でそれを縛りつけます。

「放せ……もっと近くで歌声を聴かせろ!お前たち、もっときつく身体を縛り上げてくれ!」

解放して欲しいのか、縛られたいのか一体どっちなんだ……オデュッセウスのとんだ道楽につき合わされながらしばらく経つと、セイレーンたちは次々と海に墜落していきました。

何でも、セイレーンは自分の歌声を聴いてまだ生きている者が現れた時、死ぬ運命だったということで、かくして海は平和になったということです。

めでたし、めでたし。

なぜスターバックスのロゴになったのか

スターバックスのロゴ(セイレーン)
スターバックスのロゴの変遷(マイナビニュースより引用

ここまで見てきて「スターバックスのサイレンは、ギリシャ神話のセイレーンと姿が違うようだけど?」と思った方も多いでしょう。

海洋技術の発達によって遠洋航海が可能となった中世以降、セイレーンの姿は近海の鳥から大海原の魚に変わっていきました。

尻尾が二つに分かれているのはそのバリエーションで、スタバのロゴもよく見ると両側に何か魚みたいな尻尾が伸びています。

で、そのセイレーンが何故スタバのロゴに採用されたのかと言いますと、人々を魅了した彼女たちにあやかって千客万来を期したそうです。

また、スタバ発祥のシアトルは港町ですから、海の守り神として親しみやすいマスコットとして選ばれたのでした。

ちなみに、スターバックスという屋号は、メルヴィルの海洋冒険小説『白鯨』に登場するスターバック一等航海士の名前から採用。同作に登場する捕鯨船ピークォド号の方が人気だったようですが、もしかしたら捕鯨反対者にも配慮したのかも知れません。(もしもスタバが「ピークォド・コーヒー」になっていたら、ちょっと呼びにくそうですね)

併せてシアトル近郊にあるスターボ採掘場(レーニア山)も屋号の由来となったようで、厳しい肉体労働者の憩いとして親しまれています。日本での略称スタバと似ていますね。

スターバックスの創立者によると、サイレンについてギリシア神話は意識しておらず、ノルウェーの木版画に描かれていた姿をデザインしたそうで、現代では欧米各地に広く知られ、親しまれていたことが分かります。

神話の時代から語り継がれてきた存在が、姿かたちを変えながら今なお愛されている……。あちこちで見かけるマスコットやシンボルには、神話に由来するものがデザインされていることも多いので、他にも探してみると楽しいでしょう。

※参考文献

  • 蔵持不三也 監修『図説ヨーロッパ怪物文化誌事典』原書房、2005年2月
  • ハワード・シュルツら『スターバックス成功物語』日計BP社

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