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【Fate/FGO原典解説】アーサー・ペンドラゴン――円卓の騎士を従えた伝説の王

ゲーム「Fate/Grand Order」の登場人物紹介を行っているこのシリーズ。

今回は騎士王「アーサー・ペンドラゴン」です。

Fateシリーズでは本名は「アルトリア」という名の男装の女性とされ、初作「Stay Night」のメインヒロインを飾って以来今もシリーズの顔である彼女(彼)。

その原点である「アーサー王伝説」もまた英雄伝承の代表格ともいうべき王道の騎士物語です。

今回はこの伝説的な王の物語について追ってみたいと思います。

アーサー王伝説(1)――王の即位とブリテンの発展

アーサー王
アーサー王(Charles Ernest Butler作、原典

アーサー王伝説は、6世紀頃のブリテン(イギリスの一部)を舞台にした騎士物語です。

具体的な成り立ちや細かい物語は下記の特集記事に譲りまして、ここではFateに関連する人物を中心に、そのあらましを簡単にご紹介したいと思います。

アーサー王特集

【特集】アーサー王伝説のすべて

まずはじめに、ブリテンには先代の王ユーサーと、それに仕える魔術師マーリンがおりました。

ユーサー・ペンドラゴン
ユーサー・ペンドラゴン(ハワード・パイル画、1903)
魔術師マーリン
魔術師マーリン(Louis Rhead作、原典

ある日、燃える竜のような彗星が降り注ぐのを見て、マーリンは「ユーサーの子が英雄的な王となる」という予言である、と王に進言します。

予言通りにユーサーは息子アーサーを授かるのですが、その相手は当時敵対していた国の王妃イグレイン、いわゆる不義の子でした。(後にこの王妃とユーサーは結婚するため、嫡子にはなるのですが)

生まれの複雑さ故にアーサーは身分を隠し、ユーサーの臣下の養子として育てられる事になります。

少年期は自身もその素性を知らずに育ったアーサー。

しかしある日「選定の剣」カリバーンをそれと知らず抜いてしまう事で、彼は自身の資質を証明します。

アーサーとエクスカリバーの描画(1906年)
アーサーとエクスカリバーの描画(1906年)

折しも先代の王ユーサーは既に亡くなり、後継ぎ不在で国が混乱していた時期。

王の資格のある者にしか抜けないという剣を抜いた少年の登場は天啓のようなものでした。

彼は晴れて王の後継者として認められます。

王位を継いだアーサーは、先代に続き宮廷魔術師として仕えるマーリンの導きも受けながら、ブリテンを守るために戦います。

王としても戦士としても活躍するアーサーのもとには、同じく勇敢で騎士道精神あふれる騎士達が数多く集いました。

彼らの集会にはそれぞれに上下をつけないために、巨大な円卓が使われました。

「円卓の騎士」と呼ばれる由来です。

アーサー王と円卓の騎士を描いた中世の西洋画
アーサー王と円卓の騎士を描いた中世の西洋画

王と騎士達はブリテンを脅かすさまざまな侵略者や魔獣を打ち払い、ついには王都「キャメロット城」を築き上げ、ブリテンの繁栄を不動のものとしました。

この時期がアーサー王の栄光の頂点と言えるでしょう。

アーサー王伝説(2)――騎士たちの裏切りと王の末路

しかし、アーサー王の栄光に終止符を打つことになったのもこの円卓の騎士。

「モードレッド」と「ランスロット」でした。

モードレッドはアーサーの息子ですが、アーサーの異母姉モルゴースとの間の不義の子であり、またマーリンによって「王を破滅させる」という予言を受けた子でした。

アーサーの最後の敵モードレッド
アーサーの最後の敵モードレッド(ヘンリー・フォードによるアンドリュー・ラング『アーサー王と円卓の物語』(1902年)の挿絵)

この生まれがモードレッドの人生に影を落とし、彼は粗暴で騎士道を軽んじる性格に育ち、父であるアーサー王に対する確執を深めていきます。

ランスロットは優れた武勇と精神を備えた騎士でしたが、ただ一つ、アーサー王の王妃・ギネヴィアとの恋という罪を犯していました。

騎士と王妃、許されない恋が公に知られてしまった事が、アーサー王伝説終幕の始まりとなります。

王妃の犯した不貞は大罪で、彼女は火刑にされる事になってしまいます。

愛する人と騎士道の間で悩んだ末、ランスロットは騎士道を捨てることを選びました。

止めようとした同志である円卓の騎士たちをも殺害し、彼女を連れ国外へ逃亡します。

ランスロットがグウィネヴィアの寝室で、モードレッドとアグラヴェインと戦っている場面
ランスロットがグウィネヴィアの寝室で、モードレッドとアグラヴェインと戦っている場面(Walter Crane作、原典

当然ながらこの裏切りが許されるはずもなく、王は軍を率いてランスロットを討伐にかかりました。

しかしその際にキャメロット城の留守を預けた相手はモードレッド。

彼からすれば下克上を起こす千戴一隅のチャンスです。

王が城を出て不在となった隙を狙い、モードレッドはキャメロットを奪うべく反乱を起こしました。

矢継ぎ早に臣下に裏切られてしまったアーサーですが、何より本拠地の城を失ってはどうしようもありません。

ランスロットの処遇は一旦置いて、モードレッド迎撃のために引き返します。

そして、「カムランの丘」と呼ばれる土地で起きたアーサーとモードレッドの決戦が、王の最期でした。

戦いの末モードレッドはアーサーの持つ聖槍に貫かれて絶命しますが、アーサー自身も深手を負い、命を落とします。

カムランの戦い(N.C.ワイエスによる『少年のためのアーサー王物語』の挿絵、1922年)
カムランの戦い(N.C.ワイエスによる『少年のためのアーサー王物語』の挿絵、1922年)

アーサーが最期を迎える際、「湖の乙女」と呼ばれる精霊たちが彼を迎え精霊の園アヴァロンへと連れて行かれ、そこで永遠の眠りについたとも、いつか再び目覚める日の為に休息しているとも言われています。

『アーサー王のアヴァロンでの最後の眠り』
『アーサー王のアヴァロンでの最後の眠り』(エドワード・バーン=ジョーンズ画、1881年-1898年)

アーサーが手にした伝説の武具たち

アーサー王は一国の王であると同時に、勇敢な騎士としての逸話が数多く残されています。

戦いの逸話につきものなのは名のある武器。

ということでFateシリーズでも引用されているアーサー王にまつわる武器をいくつかご紹介します。

一つ目は選定の剣こと「カリバーン」。

先に挙げた物語の通り、アーサーの資質を証明する事になった剣です。

アーサー王

この剣は先代王ユーサーが亡くなり、後継者についてロンディニウム(現代のロンドン)で諸侯たちの会議が行われていた時、大聖堂の広場に突如現れたものでした。

「この剣を抜ける者は王の資格を持つ者である」と書かれた台座に刺さった状態で現れたこの剣は、数年の間に多くの諸侯や騎士たちが挑みましたが誰もが抜く事が出来ませんでした。

それをあっさりと抜いてしまったのがアーサーであった、という訳です。

その後戦いの場でも名剣として活躍しましたが、ある時アーサーが敵を背後から斬りつけた際、「騎士道に反する行いをした」ことで力を失い折れてしまったとされています。

二つ目は聖剣「エクスカリバー」。

最早説明不要の、伝説の剣・聖なる剣の代名詞のような名剣です。

この剣はアーサー王がカリバーンを失った後に精霊「湖の乙女」から授かった物で、刃は折れることはなく、鞘は所有者に不老不死の加護を与える力を持つとされています。

『アーサー王と円卓の騎士』挿絵
『アーサー王と円卓の騎士』挿絵(Newell Convers Wyeth作、原典

アーサーの生涯にわたって愛用され、多くの戦いを勝利へと導いた剣でした。

Fateにおいて「約束された勝利の剣」と二つ名されているのも伊達ではない活躍ぶりです。

カムランの戦いにおいてアーサーが死を迎える際、騎士ベディヴィエールはアーサーに剣を湖の乙女に返還するよう命じられましたが、加護を失って王が死ぬ事を惜しむあまり返還するまで三度ためらった、という切ない逸話もあります。

エクスカリバーを水に投げ入れるベディヴィア(オーブリー・ビアズリー、1894年)
エクスカリバーを水に投げ入れるベディヴィア(オーブリー・ビアズリー、1894年)

三つ目は聖槍「ロンゴミニアド」。

別名「ロンの槍」とも言うこの槍は、伝承上ではエクスカリバーと並ぶ宝物とされており、カムランの丘でモードレッドを倒したのもこの槍だとされています。

アーサー王はモードレッド卿を討ち果たすが、自身も深手を負う(アーサー・ラッカム画、Wikipediaより)
アーサー王はモードレッド卿を討ち果たすが、自身も深手を負う(アーサー・ラッカム画、Wikipediaより)

伝説のラストを飾る戦いで名前が出てくるものの、有名すぎるエクスカリバーの存在もあり、こちらはあまり名の通っている武器ではありません。

しかしFGOプレイヤーであれば、メインストーリーの1部6章において重要な役割を果たしたため、これで印象に残った人も多いかと思います。

「アーサー王伝説」の成り立ち

キャメロット(ギュスターヴ・ドレ画、illustration of Camelot from "Idylls of the King")
キャメロット(ギュスターヴ・ドレ画、illustration of Camelot from “Idylls of the King”)

さて、ここまでアーサー王という人物とその軌跡についてお話してきました。

この項は少しメタになりますが、「物語」としてのアーサー王伝説とそのモデルについてのお話をしたいと思います。

アーサー王伝説の舞台である6世紀。

この頃の西洋はギリシャ・ローマといった強国が衰退し、混乱のただなかにあった時代でした。

そのためこの時代についての正確な資料は、他の時代に比べるとあまり多くありません。

その少ない資料の中で、「アーサー」と「ルキウス・アルトリウス・カストゥス」という二人のブリテン人のために戦った戦士がおり、アーサー王のモデルとなりました。

(余談ですが、ルキウスの姓「アルトリウス」をもじったものがFateにおける女性アーサー王の本名「アルトリア」になります)

記録上の彼らはどちらも王ではないのですが、ブリテンを侵略してくる他の勢力を何度も迎え討った事、「カムランの丘」という場所でメドラウド(モードレッドのモデル)と共に戦死した事など、伝説の骨子となる記録がいくつか残っています。

「伝説」が成立するのはここから数百年ほど後のことです。

中世中期、時代も安定し騎士道精神が尊ばれるようになった頃。

フランスを中心に武勲詩、いわゆる騎士道物語が流行しました。

『トリスタンとイゾルデ』 (ジョン・ダンカン/画、1912)
『トリスタンとイゾルデ』 (ジョン・ダンカン/画、1912)

その時に注目されたのがアーサーの存在です。

ブリテンを守るため戦ったとされるアーサーをモデルとした物語は好評を呼び、いくつもの英雄譚が積み重ねられた末に、ブリテンの伝説的な王とまで描かれるようになりました。

同時に王に仕えていたであろう騎士たちも、各国の作家たちによって創作され、これが円卓の騎士となっていきます。

彼らが円卓の騎士=上下の無い関係というのは単に物語の中の設定だけでなく、各々に作られた騎士物語に上下をつけず対等に扱うという意味もあったのかもしれません。

歴史上の記録を下敷きに、多くの英雄達が創作され、対等な席で一同に集う。

この「アーサー王物語」の構造は、Fateシリーズの世界中の伝承や神話から英霊を呼び集めて戦うという物語構造、特にFGOの主人公一人の元に時代も地域も信仰も違う英雄たちが一同に集う、という構造にどこか似ている感じがします。

Fateシリーズの始まりであり顔でもあるアルトリアの原点が「アーサー王伝説」であるのも納得というものです。

魅力的な英雄譚にあふれるアーサー王の物語

アーサー王伝説の物語、そしてその成り立ちについて簡単に解説してきましたがいかがでしたでしょうか。

成り立ちでお話した通り、この伝説には英雄的な王アーサーを始めに魅力的な騎士達の物語が数多く語られています。

当サイトにはアーサー王伝説の専門記事があるので、詳細について興味のある方はぜひご覧になって下さい。

アーサー王特集

【特集】アーサー王伝説のすべて

【特集】Fateシリーズ出典解説

Fate第一作から登場しているアーサー王(アルトリア)ですが、この王にまつわる人物やストーリーはその後の作品でも何度も描かれ、最近にも円卓の騎士の一人である「ガレス」がFGOに登場しました。

Fateシリーズの中のアーサー王物語も、まだまだ広がりを見せてくれそうです。

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