- 種別:アーサーの一族
- アーサーとの関係:師匠
アーサー王伝説に登場する大魔法使い。とはいえ、マロリーの物語では大した魔法を使っているわけではない。
アーサーに助言を与える賢者「マーリン」
マーリンは、敬虔なキリスト教徒の女性と、夢魔(インキュバス)との間に生まれたとされる。
夢魔は一種の悪魔であるから、マーリンも呪われた子となるはずだったのだが、母親がすぐに洗礼を受けさせたため、邪悪な部分が隠れ、善なる魔法使いになったという。
とはいうものの、これはキリスト教が普及してから後付けで作られたエピソードに過ぎない。
マーリンの原型は古代のケルト人の間で崇拝されていたドルイド僧だと考えられている。

彼らはいわゆる賢者であり、予言を行い王たちに助言を与えたという。
人によっては、ケルト人の社会では世俗の権力は王、宗教的権力はドルイドによって司られていた、とすることもある。
さて、アーサー王伝説では「大魔法使い」とされるマーリンだが、実はあまり派手な「魔法」は使っていない。
マロリーの物語では、アーサーをもうけるためにユーサーをティンタジェル公そっくりに変装させたことと、アーサーの命を奪おうとしたペリノア公を眠らせたことぐらいしか紹介されていない。
キリスト教色が強くなると、不思議な行為は「奇跡」として、神やキリスト・使徒・聖人たちの専売特許になるので、キリスト教に起源を持たないマーリンに、あまり派手な魔法は使わせられなかったのだろう。
マーリン本人は、アーサー王伝説の中盤で、愛人であったヴィヴィアンに幽閉されて退場することになる。
しかし、マーリンが元々持っていた、「魔法を使う不思議でなおかつ高貴な存在」というキャラクターは、マーリンを幽閉したヴィヴィアンと、アーサーの義理の姉であるモルガン・ル・フェイに受け継がれることになるのだ。
配役交代がなかったら、最後のシーンで傷ついたアーサーをアヴァロンの島へと誘う役目もマーリンのものとなっていたはずだ。
これはあまり構図として美しくないので、やっぱりヴィヴィアンに配役交代して良かったのだと思うしかあるまい。
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