- 種別:聖杯の騎士の妻
- 親族関係:ローエングリンの妻
アーサー王物語と背景を共有する「ローエングリン」のヒロイン。有名な「結婚行進曲」で祝福された女性であるが……。
【聖杯の騎士の妻】エルザ・フォン・ブラバント
ローエングリン同様、ワーグナーのオペラにのみ登場するキャラクター。
現在のオランダ近辺にあるブラバント公国という国が舞台になっている。
エルザはこの国の姫で、ある時弟殺しの疑いをかけられ、正体不明の白鳥の騎士に助けられる。
やがて彼女は、騎士との約束に従って彼の花嫁となる。
結婚が決まって会場の大聖堂に移動する時の音楽が、吹奏楽コンクールでよく演奏される「エルザの大聖堂への行進」である。
この演奏とともに、「ローエングリン」第2幕は終了する。
続く第3幕では「前奏曲」に引き続いて「婚礼の合唱」が演奏される。
つまり、メンデルスゾーンのものと並んで2大定番となった、「結婚行進曲」である。
「ローエングリンの項目」で説明した通り、このオペラのあらすじは「アモールとプシュケー」の前半部分とほぼ同じである。
「アモールとプシュケー」は、自分の愚かさによって最愛の夫を失った女が、真の愛情を取り戻すまでの苦難の物語で あるため、その前半部分をちょんぎった「ローエングリン」は「馬鹿な女がつまらない好奇心から夫を失い破滅する話」になってしまっている。
ワーグナーの楽劇に登場する女性キャラクターは、「指環」のブリュンヒルデのごとく、自己犠牲の精神にあふれた烈女型が中心なのだが、エルザはそうはなり切れておらず、ごく普通の「可愛い花嫁さん」にあこがれる夢見がちな女の子として描写されている。
このためか、エルザ役(ソプラノ)にはあまりたいした曲は割り当てられているわけではない。
歌いっぱなしなのはローエングリン役である。
というわけで、「ごく普通の女の子の結婚」を扱い、幾多の結婚式で演奏されるワーグナーの曲だが、その元になっているオペラが「初夜も満足に果たせぬまま亭主に逃げられて死ぬ女の話」であることを知っている「女の子」はどれぐらいいることだろうか。
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