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エンキの基本情報
- 名:シュメール名「エンキ」、アッカド名「エア」
- 出典:シュメール神話
- 所有:角付きの冠
- 特徴:魚をシンボルとする、黄道12宮の山羊座と水星を象徴
- 関連:アン(父)、ナンム(母)、エンリル(兄)、ニンフルサグ(配偶神)、ニンサル(娘かつ妻)、ニンクル(娘かつ妻)、ウットゥ(娘かつ妻)、ニンティ(娘かつ妻)、ニンギリガル(配偶神)
エンキの概要
エンキはシュメール神話に登場する神。
シュメール・アッカド系神話において最も重要な神々アン、エンリル、イナンナ(もしくはウトゥ)を合わせた四柱の神のトップ3として崇められた。
優れた知性を持ち、領土である淡水の領域アプスからこの世界を構成する様々な存在を生み出した創造神でもある。
地と水、知識と魔法を司る。
最も人間に好意的であり、神々のために働く道具として作られた知性なき存在だった人間に、手工芸や農業、文字、法律、建築、魔法などあらゆる文化を授けた。
後世の半魚半神の知恵の神オアンネスの前身と思われる。
エンキの説話
農牧の始まり
エンキはエンリルと組んで、五穀の女神アシュナンと共に沼沢地に農地や牧草地を作り、家畜や作物を世にもたらした。
エンキは地の神であり水の神でもある。
万物を創造する魔力で、シュメールの地に安定をもたらしたとされる。[1]
エンキとニンフルサグ
繁殖と豊穣の神でもあるエンキは、残念なことに浮気性で、自分の娘との間に次々と近親相姦を行なった。
配偶神ニンフルサグはそれに気づき、曽孫に当たる女神ウットゥの胎内からエンキの精気を抜き出し、それを土に埋めて8種の植物を育てる。
不倫に共謀していたエンキの従者イスィムドゥは、主人の求めに応じてその植物を刈り取って渡した。
自らの精を体内に取り込んだエンキはニンフルサグの呪いにかかり、体の8箇所に腫れ物ができた。
死にゆくエンキのためにエンリルとアヌンナキたちはニンフルサグを呼び、その怒りを鎮めた。
女神はエンキを体内に宿し、彼の身体から8つの精を取り出し病を癒す8人の子を産むことで、エンキの体を治した。
この逸話から、生命の創造の種は男性の精子の中にあり、女性の身体は大地そのものの役割を果たすが、創造の力は持たないという考えがうかがえる。[2]
エンキとニンマハ〜人間の創造
地上世界が創られると、食物や住居を得るための労役は地の下級神たちの仕事となった。
様々な労役に就き、食物を集め、運河を掘削する仕事のあまりの辛さに根をあげた下級神たちの要請で、アヌンナキたちは神々に代わって労務を負うべき存在として人間を創造した。
神々の母ナンムの命で、エンキとニンマハ(ニンフルサグの異名とされる)が創り上げた最初の人間は、ウムウル(“我が日は遠い”?)と呼ばれ、不完全なものばかりだった。
が、エンキはそれぞれの人間の運命を定めた。
肢体の自由がきかないウムウルのあまりの無能さに愛想を尽かし、非難するニンマハ。
この後の顛末は粘土板の破損が多く、わからなくなっている。
最後は、“「ウムウルが我が神殿を建てるように」”というエンキの発言に続いて、“ニンマハは偉大な主エンキに対抗できなかった。父なるエンキよ、あなたを讃えることは素晴らしい”という賛美の言葉で結ばれる。
創造した生命に等しく慈愛を注ぐエンキの性格が読み取れる。
この後も、知性を持たなかった人間に根気強く文明の知識を教え続けるエンキは、後代まで尊崇を受け、影響を残し続ける。[3]
イナンナ女神との関わり
若く美しいイナンナ女神に対して、エンキは微笑ましいくらい甘い顔を見せる。
エンキの統治する都市エリドゥを豊穣と愛の女神イナンナが訪問し、喜びに湧いたエンキの神殿で大宴会が催された。
自らが守護する都市ウルクをシュメールの中心としたいイナンナは、エンキの勧めるビールを断り、逆にエンキを酔い潰してしまった。
エンキは世界秩序の根元となる律法、もしくは恵みの魔法の装身具「メ」を掌握していた。
酔って気の大きくなったエンキは、彼女の懇願に応えて全ての「メ」を譲り渡してしまった。
翌朝慌てて従者イスィムドゥを差し向けるが、後の祭り。
このことは、政治的権威の中心がエリドゥからウルクに移行した経緯を語ったものである。[4]
有名な『イナンナの冥界下り』神話においては、出発に際して宵の明星として代役を務めるしもべのニンシュブール(Nlnshubur)にイナンナは言う。
もし自分が3日のうちに帰還しなければ、神々の王エンリル、父である神ナンナ(ル)、最後にエンキに助けを求めるようにと。
果たしてイナンナは戻らず、2人の主神は腰を上げなかったが、エンキ一人が身を案じ、救おうとした。
エンキは爪の垢から二体のガルラ霊を作り出し、生命の水と食物を持たせ、忠告を与えて解き放った。
そのおかげでイナンナは無事冥界から生還する。
身代わりとして夫とその姉を冥界に差し出すことになるのだが。[5]
脚注
出典
- [1][2][5] 杉勇、尾崎亨 原典訳『シュメール神話集成』ちくま学芸文庫
- [3]月本昭男 『古代メソポタミアの神話と儀礼』岩波書店
- [4] 池上正太 『オリエントの神々』新紀元社
参考文献、URL:
- ジョン・グレイ『オリエント神話』青土社
- ウィキペディア
※ライター:紫堂 銀紗
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