ニンフルサグの基本情報
- 名:シュメール語名「ニンフルサグ」
- 出典:シュメール神話(メソポタミア神話)
- 所有:角のついた頭飾り、段々のスカート、肩に矢筒、繋がれたライオンの子を伴う
- 特徴:シンボルは子宮、Ω(オメガ)。蛇、雌牛の姿で描かれることもある
- 関連:エンキ(配偶神にして兄)、アン(父)、キ(母)、エンリル(兄)、ニンサル(娘)、アブ(息子)、ニンスィクラ(娘)、ニンキリウトゥ(娘)、ニンカスィ(娘)、ナズィ(娘)、アズィムア(娘)、ニンティ(娘)、エンシャグ(息子)
ニンフルサグの概要
シュメールの大地と豊穣の女神で、大地母神として筆頭の人格を持つ。
運命を定める7人の神々の一人。
夫であるエンキと共に植物をはじめとする様々な生命を生み出した。
神々や人間の産婆、地上の王たちの乳母とされ、歴代のメソポタミアの王は“ニンフルサグの乳により養われた”とされた。
バビロニアのネブカドネザル(在位紀元前1125〜前1104)など多くの王が女神の子どもと称して彼女を守護神とした。
ニンフルサグの説話
たくさんの名前
ニンフルサグの名は「山の貴婦人」(nin:貴婦人・女主人・女神、hursag:聖たちもいたなる山)を意味する。
他にも多くの称号、呼びかけなどに加えて、長い間に習合される女神の名も取り込んで増えていった。
なかでも、ニンマーあるいはニンマハ(Nlnmah:偉大なる女王)、ニントゥ(Nintu:出産の女神)、ニンメンナ(Ninmenna:王権の守り神)など、かつては別々の女神であったものが時代が進むにつれてニンフルサグと同一視されるようになった有力な女神。
ニンマハの名はエンリルの配偶神ニンリルの称号にも使われた。
歴史家のサミュエル・ノア・クレーマーは、大地の女神キとニンフルサグを同一視していた。
チグリス・ユーフラテス川に挟まれたメソポタミアの大地そのものがニンフルサグの身体と言えた。[1]
『エンキとニンフルサグ』〜癒しの神産み
水神エンキの浮気を呪ったニンフルサグが結局彼を産み直すようにして癒した話はエンキの項ですでに扱った。
エンキの精から作った8種の神聖な植物(蜜草、桂皮樹以外は名称不明)を貪り食った故の病……。
自らの呪いを解くために、ニンフルサグはエンキを胎内に置き、彼の病んだ部分から種を取り除いた。
一つ取るたびに病を癒す子を産むことで、一ヶ所ずつ治癒。
この辺の描写は日本神話に通じるものがある。
- 頭の痛みは神アブ(Abu:植物の主)、
- 顎(髭) の痛みは女神ニンスィクラ、あるいはニントゥルラ(Nintulla:マガンの主)
- 鼻の腫瘍はニンキリウトゥあるいはニンストゥ女神(Nlnsutu:ニンアズの配偶神)、
- 口の痛みはニンカスィ(Ninkasi:胎児の女神)、
- 心臓の痛みはナズィ又はナンシェ(Nanshe:ニンダラの配偶神)、
- 腕の痛みはアズィムアまたはダジムア女神(Dazimua:ニンギシュズィダの配偶神)、
- 肋骨の痛みはニンティ女神(Nin ti:月々の主人)、
- 肩甲骨の痛みはエンシャグ(Enshag:ディルムンーエデンの園のモデルになった場所ーの主)
という風に。
生命を産むニンフルサグの力で甘い水の神エンキは癒された。[3]
脚注
出典
- [1][2]池上正太『オリエントの神々』新紀元社
- [3] 杉 勇、尾崎亨『シュメール神話集成』ちくま学芸文庫
参考文献、URL
※ライター:紫堂 銀紗
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