ミノタウロスの迷宮ラビュリントスの図面|脱出簡単そう…

ラビリントスを進むテセウスとミノタウルス(Edward Burne Jones, Theseus_and_the_Minotaur_in_the_Labyrinth)
ラビリントスを進むテセウスとミノタウルス(Edward Burne Jones, Theseus_and_the_Minotaur_in_the_Labyrinth)

ギリシア神話に登場するモンスター格のキャラクターの中でも特に有名なのが、ミノタウロス。

最近のメディアでいえば、しっかりパズドラにも登場していますね!

そしてミノタウロスといえば、「迷宮に住む獣人」のイメージ!

ミノタウロスが住んでいた迷宮の名前が「ラビュリントス」ですが、一説によると、これはクレタ島に実在していた古代の王宮、「クノッソス宮殿」の複雑な構造がモデルになっているとされています。

そのクノッソス宮殿は今でも遺跡としてクレタ島に建っており、ギリシャでも屈指の観光スポットとなっております。

もうずいぶん昔の話になりますが、実は本稿のライターである私、少年時代に、父に連れられてクノッソス宮殿に行ったことがあるのです!

というわけで今回は、私にとってギリシャ神話の中でも特に個人的にも思い入れの強い、「ラビュリントスのミノタウロス」についてご紹介します。

記事の最後では、クノッソス宮殿を訪問した感想についても、お話しますね。

まずはおさらい:ミノタウロスって、そもそもどんな奴?

ミノタウロス像
ミノタウロス像(原典

最初に強調したいのは、やはり、そのビジュアルの恰好よさ!

マッチョな男性の肉体に、頭だけ牛というデザインが、シンプルながら実に格好いい!

それでいてクレタの王子という立派な血筋なのですから、怪物に生まれついた運命に悲哀も感じさせる、愛され悪役でもあるのでした。

とはいえ普通に考えて、このミノタウロスと夜の街で遭遇したら、かなり危険です。

  • 牛の頭のくせに人肉を食うらしい
  • 力はメチャクチャ強い
  • スタミナは無限
  • 足もそれなりに速そう
  • たぶん、会話は通じない。よって命乞いはムダ

頭が良くない様子なのが唯一の救い。

バイクや車で逃げればすぐ諦めてくれそうですし、自転車で逃げてもびっくりして追ってこないかもしれない。

スマホを取り出して動画でも再生して見せつければ、「魔法だ!」とびっくりして逃げていくかもしれない。

とはいえファンタジー作品の解釈によっては、たまに喋ったり魔法を使ったりするミノタウロスも出てくる。

こうなるともう手がつけられませんが……。

ミノタウロスが閉じ込められていた迷宮「ラビュリントス」とは?

ラビリントスを進むテセウスとミノタウルス
ラビリントスを進むテセウスとミノタウルス(Edward Burne Jones, Theseus_and_the_Minotaur_in_the_Labyrinth)

ラビュリントスは、ミノタウロスが出てこられないように、名匠ダイダロスが渾身の設計を凝らした大迷宮とされています。

ミノタウロスを退治しにきた英雄テセウスも、「うかつに迷宮に入ると、ミノタウロスを退治できたとしてもオレが脱出できないな」と悩んだ模様。

そこに現れた王女アリアドネに、「ギリシャに連れ出してくれるかわりに」という条件付きで、入口に糸を結んでおいて帰り道はそれをたどればいい、という秘策を教えてもらい、なんとかしました。

これが有名な「アリアドネの糸」。

そんなに脱出困難な迷宮って、どんなものなの?

気になりますよね。どんなデザインなんだろう?

きっと、単純な平面だけじゃないだろう。

階段やハシゴも組み合わされた、立体的で広大深淵な大迷宮なのだろう!

そう夢を膨らませるのは、私だけではないはず。

ところがギリシャでは、古代の神話時代に作られた「ラビュリントスの図」が粘土板として出土したり、クレタ島の昔の貨幣にラビュリントスの図面がちゃんと刻まれていたりするらしい。

つまり、本場ギリシャでは、ちゃんとラビュリントスの設計図が伝承されている!

どんなものか、さっそく見てみましょう!

ラビリンスの描かれたクノッソスの銀貨
ラビリンスの描かれたクノッソスの銀貨(原典

……。

……あれ?

なんかイメージとずいぶん違う。

これ……脱出カンタンじゃない?

というか、なんでこれを出られなかったんだ、ミノタウロス!?

というか、なんで糸を用意したんだ、アリアドネ!?

なんだか、夢を少し壊されたような。。。

うーむ。きっと、実際の「ミノタウロス退治」は、こんな感じだったのでは?

アリアドネ「おかえりなさい!テセウス様!よくぞご無事で!ミノタウロスは退治できましたか?」

テセウス「ああ。たしかに迷宮の中心にいたよ。同じ廊下を何度も行ったり来たりしているだけの変な奴だった」

アリアドネ「私の糸のおかげで、無事、迷宮からも脱出できましたね」

テセウス「あ、うん……。 でもまあ……ぶっちゃけ……べつにいらなかったかも……」

アリアドネ「(さえぎって)さあ、約束どおり、わたしをギリシャにつれていってくれるんですよね!」

テセウス「……」

というわけで、ラビュリントスの正体をマジメに考察!

夢が壊れたままでも何ですから、ちょっとまじめに調べてきました。

ラビュリントスというのは、もともとは、単に廊下も部屋も全部を一筆書きのように一本につないだデザインのこと。

複雑ではありますが、分岐はしないので、現代でいう「迷路」ではないのです!

ただ、すべての部屋と廊下を通過しないと最奥の部屋にたどり着けない、ということで、侵入者に対するセキュリティという面では、かなり強い!

ミノタウロスも、「迷宮に閉じ込められていた」のではなく、「最奥にたどり着きにくいラビュリントスの中に隠されて、守られていた」というのが正しいようですね。

ではなぜ、「ラビュリントス」というのが、複雑で脱出困難な「大迷路」を表すことになったのかというと、これはもう、後世にいろんな作家がミノタウロス物語を扱っているうちに、話がエスカレートしたからとしか思えない。

まあ、その気持ちはわかりますよね。

私だって、ミノタウロスは一本道の宮殿の奥にいるよりも、複雑怪奇な大迷路の中に住んでいてほしい!

最後に:観光地としてのクノッソス宮殿はファンタジー好きにオススメ!

ギリシアのクレタ島にある青銅時代最大の遺跡 クノッソス(牛のフレスコ画が特徴的な北側の入り口
クノッソス(牛のフレスコ画が特徴的な北側の入り口, 原典

最初に述べた通り、本稿のライターである私、父親の仕事の関係で少年時代にギリシャにいたことがあります。

そのときに「ミノタウロスの迷宮を見たい」とお願いをして、クレタ島に行ったことがあるのです。

当然、クノッソス宮殿も見学しました。

こまごまとした部屋や廊下が複雑に連なっていく不思議な構造の建物で、「たしかに、迷いそうになる」神秘的なところでした。

この宮殿のウワサが古代ギリシアに伝わり、話にオヒレがついて、「クレタ島にはミノタウロスという怪物が住んでいるラビュリントスがある」という話になったのが、ミノタウロス物語の始まりと推測されます。

外は地中海気候ならではの、真っ青な空と日光でキラキラと明るいのに、宮殿の中は薄暗くて、曲がり角が多く、「たしかにその角の暗がりから、ワォーッとミノタウロスが飛び出してくるかもしれない!」と少年期の私をドキドキさせる雰囲気たっぷりでした!

観光地としても、クレタ島はぜひオススメです!

日本からの行き方としては、ギリシャの首都アテネまで行って、そこから国内便の飛行機に乗り換えてさらに1時間程度。

もっとも、このアテネ-クレタ島を結ぶ飛行機ですが、私が行った時は、行きも帰りも三時間くらい離陸が遅延となり、真夏の暑い空港ロビーで待たされている間が、けっこう大変でした。

もっともこれは私が子供の頃のギリシャの話なので、今は交通の便も、もっとよくなっているかもしれません!

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