神話の舞台・現代ギリシャ:アテネのスニオン岬にあるポセインドン神殿

スニオン岬にあるポセイドーン神殿(Ryunpos撮影)
スニオン岬にあるポセイドーン神殿(Ryunpos撮影、原典

現代ギリシャの「神話ゆかりの土地」を、ライター自身の少年時代のギリシャ滞在経験を踏まえつつ紹介していくこのシリーズですが、今回はスニオン岬のポセイドン神殿をご紹介します。

おそらく少年マンガ『聖闘士星矢』を読んでいた世代には「スニオン岬といえばあの悪役が封印されていた地名では!」とビビッとくるはずです。

そうでなくても「海神ポセイドンの神殿」となれば、どれほどの威容のものかと胸躍るのではないでしょうか?

結論を先に言ってしまうと、残念ながらここは、以前の記事で紹介したアテネ市内のゼウス神殿と同じく、柱がボンボンと取り残されているだけの廃墟になっています。

「大きな入り口があって、奥にポセインドンの神像があって」というような空想をしてから出かけると、かなりイメージが違います。

屋根のないふきさらし状態ですし。

そうであっても、スニオン岬はギリシャ観光の中ではかなりオススメなスポットです。

景色がきれいな所である上に、首都アテネから気軽に行きやすい距離なのです!

首都アテネから別の観光地へ移動しようとすると何かと交通が大変なギリシャにおいて、アテネからちょっと足を延ばせばいける名所、という意味での心理的な安心感は、大きいのではないでしょうか?

スニオン岬に行くなら、レンタカーでのドライブか、半日バスツアーがオススメ

スニオン岬の夕暮れ(Kuno Lechner撮影)
スニオン岬の夕暮れ(Kuno Lechner撮影、原典

スニオン岬はアテネから車で約2時間の距離。

首都アテネだけでもじゅうぶんに観光資源がいっぱいですが、そろそろ街歩きにも慣れてきた、ギリシャ滞在の三日目や四日目くらいのタイミングに、思い立って出かけてみるのに、ちょうどよい距離です。

そのうえ、アテネから南下してこのスニオン岬方面を目指すということは、絶景で有名なギリシャの海岸線をひたすら見下ろしながらドライブができるということ。

途中でカフェレストランに停車して、シーフードのランチ、なんてこともできます。

まさにギリシャの良いところを満喫ですね。

というわけで、本来ならばオススメは「レンタカーで自分の運転でドライブ」!……と言いたいところなのですが、現在はどうなっているかはわかりませんが、私が滞在していた二十年ほど前は、ギリシャの交通ルールというのは日本では考えられないほど荒っぽく、日本人ドライバーは緊張のしっぱなし。(私の父親はバイタリティーあふれる昭和の企業戦士だったので、慣れてしまっていましたが!)

海外での運転に慣れていない方にはこの国はハードルが高く、往復4~5時間のドライブは精神的にしんどいかもしれません。

そこで、より安全な方法としては、現地のバスツアーに参加するのがいいでしょう!

アテネから半日バスツアーとして連日予定が組まれていますので、シーズンにもよりますが、直前の予約でもけっこう席はとれるものと思います。

絶景のスニオン岬に建設されたポセインドン神殿の物語

ミロス島から出土した紀元前2世紀のポセイドン像(アテネ国立考古学博物館蔵)
ミロス島から出土した紀元前2世紀のポセイドン像(アテネ国立考古学博物館蔵、原典

美しい海からの白波が押し寄せる断崖絶壁の上に、真っ白な巨柱がいくつも建ち並ぶ神殿の威容。

ポセインドン神殿は、そんなイメージにぴったりの遺跡です。

このスニオン岬は古代から「海の神」に対する信仰の深かったところとされていますが、ここにポセインドンをたたえる巨大神殿が建てられたのは、有名な「サラミスの海戦」の後のことでした。

この戦いのとき、ギリシャはペルシア帝国にあわや飲み込まれるかという危機にありました。

しかしデルフォイの神殿からのお告げ、「木の壁を作って防げば勝てる」を読み解いたギリシャのリーダー達は、「木の壁とは、きっと木造軍艦をたくさん作って大艦隊を作れという意味だ!」と気づき、ペルシア帝国軍を海上決戦に持ちこんで、見事に撃退しました。

陸路の戦闘ではギリシャが圧倒的に不利で、このスニオン岬の一帯も一時期はペルシア軍に占領されたし、肝心のアテネのアクロポリスまでも一時は陥落するという、絶体絶命の展開からの、起死回生。

ギリシャにとっては、まさに瀕死の状態からの大逆転、その契機となったのが海軍の勝利だったのです。

この勝利を経て、古代ギリシャは全盛期を迎え、戦いで疲弊したアクロポリスにはアテネを祀るパルテノン神殿が建設され、スニオン岬のほうにはポセイドンを祀る神殿が建設されました。

海上決戦で勝利をもたらしてくれたポセイドンへの感謝の気持ちとあわせて、「もしまた海上から外国の強力な艦隊がやってきたときには、またギリシャの海軍を守って勝利に導いてほしい」という願いが込められていたのでしょう。

現在のポセインドン神殿における最大のみどころは、「夕陽!」

スニオン岬にあるポセイドーン神殿(Ryunpos撮影)
スニオン岬にあるポセイドーン神殿(Ryunpos撮影、原典

先ほど述べた通り、ポセインドン神殿は野ざらしの廃墟の状態です。

しかし遺されている柱は、一本一本がかなり巨大であり、「これがぜんぶ揃っていた往年のポセイドン神殿は、いったいどれくらいの大きさだったのだろうか!?」などと想像するだけで、圧倒されてしまいます。

ですが今日のポセインドン神殿は、別の理由で、観光客から大人気です。

ここから見る夕陽が、ギリシャでも随一の美しさ、と言われているのです!

スニオン岬の絶景から、西のオレンジ色の空に沈む夕陽を眺め、廃墟ながらも堂々と美しいポセイドン神殿を背景に記念写真を撮影などというのは、アテネ近郊観光のまさにハイライトになるのではないでしょうか。

時間帯をうまく計算し、かつシーズンも少し外して、ツアーではなく自力でレンタカーで行けば、もしかしたら「他に誰もいない、ほとんど独占状態のスニオン岬の夕陽」に出会えるかもしれません。

もちろん、これはギリシャ旅行の上級者向けの話になってしまいますが。

なお、車で行くにせよバスツアーで行くにせよ、スニオン岬は日光がカンカン照りつける風土の中に突き出た岬です。

帽子とタオル、日焼け止め、そしてペットボトルの水はくれぐれもお忘れないように!

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