今回はちょっと珍しい、ロシアの民間信仰について、お話しましょう。
日本でいうところの「ハッピーアイスクリーム」がロシアにもあった!というお話です。
「え? その前に、ハッピーアイスクリームってなに?」と思った方。
はい、これについてはのちほど説明しますね。
その前にまず、ロシアにおける「不吉ナンバー」と、悪魔の話をさせてください!
ハッピーアイスクリームは最後に出てきます!
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ロシアの民間信仰で忌み嫌われているのは意外なほどに身近なあの数字!
日本では4と9が「死」「苦」を連想させる数字ということで、忌避される傾向がありますよね。
また西欧では「13日の金曜日」を連想させる13が、不吉であるとして忌避されるナンバーになっています。
それがロシアではどうなっているのか?
斎藤君子さんの著書『悪魔には2本蝋燭を立てよ(三弥井書店)』にて、この話がとても詳しく紹介されています。
こちらを参考文献に、ロシアにおけるアンラッキーナンバーの話を追ってみましょう。
意外なことに、それは「2」なのです。
より正確には、ロシアの伝統では「本来ひとつのものが対になっている」ことを、とても不吉なことと捉えているようです。
「2つあること」は悪魔の印?ロシアにおけるタブーのバリエーション!
社会的なタブーとしても、以下のような「対になることや、二重になること」をとにかく嫌がるケースがたくさんあるようです。
- ふたりで同時にひとつの鏡をのぞき込むことは不吉である
- ふたりが同じタオルで手を拭いてはいけない
- ふたりでひとつのものをかじってはいけない
- ふたりでひとつのコップから水を飲んではいけない
また「同じひとつの家に同じ名前の人間がふたり存在することも避けたほうがよい、どちらかが死ぬことになる」などといった言い伝えもあるそうです。
こうした「ふたつになることへの忌避」から発展して、ロシアでは「二度、同じ行動を繰り返す」ことは悪魔の印とされています。
2という数字がいつしか、そもそも悪魔を象徴する数字とされているのですね。
ロシアで魔女を退治したいときには気を付けなければいけないこと
面白いのが「魔女を殺す時には必ず一撃で殺さなければいけない」というもの。
二撃目を与えると、それはむしろ魔女に力を与えてしまい、魔女が活力を取り戻して襲いかかってくるから、というのです。
だから魔女を殺そうとして手ひどい傷を合わせた時に、瀕死の魔女が「どうかもう一撃を加えてトドメをさしておくれ!」と懇願してきても、騙されてはいけない。
二回攻撃を受けると魔女は蘇ってしまうからだ、と伝えられています。
「ロシアのハッピーアイスクリーム」! ・・・ってそもそもハッピーアイスクリームとは何?
そんな民間信仰が発展して、ロシアには「ふたりがたまたま同時に同じコトバを発してしまったときには、おまじないを唱えて不吉を払わねばならない」という風習があるそうです。
上掲の斎藤君子さんの『悪魔には2本蝋燭を立てよ』にはさまざまな事例が集められています。
それによると、ふたりが同時に同じコトバを発したときには、
- すばやく願いごとをする
- 相手の髪の毛を先に掴む
- ふたりで何か黒いものを掴まねばならない
- 「いち、にの、さん」で「ボタン」または「バナナ」という。ふたりが同じく「ボタン」ないし「バナナ」で言葉が合えば、願い事が叶う
などのパターンがあるそうです。
このあたりは、不吉を避けるためのおまじないというよりも、一種のコトバ遊びのような要素も感じられて、なんとも微笑ましく、面白い話ではないでしょうか?
ところで冒頭の「ハッピーアイスクリーム」ですが、これも斎藤君子さんの『悪魔には2本蝋燭を立てよ』に載っているコトバです。
この本では、上記のようなロシアの「ふたりが同時に同じコトバを発してしまったときのおまじない」のことを、「ロシアのハッピーアイスクリーム」であると説明しているのですよね。
で、ハッピーアイスクリームというのは何かというと。
これは日本の若者の間に広まっていたもので、「ふたりが偶然、同時に同じコトバを発してしまった時、さきに『ハッピーアイスクリーム』と言ったほうに、アイスクリームを奢られる権利がある」というコトバ遊びだ、というのですが。
正直なところ、私は、そのような風習が日本にあること自体、初耳でした。
ネットで調べてみると、たしかに実在していた流行だった模様。
けれども私の周りにいる人に聞いても、見事に誰も知らない話でした。
世代だけではなく、地域によっても違いのあった遊びだったのかもしれません。
とはいえ、「ハッピーアイスクリーム!」というおまじないのワード自体はインパクト抜群で、なるほど、自分も言ってみたくなる響きのコトバです。
同じ日本のことであっても、世代や地域が異なれば、まるで外国の風習の話を聞いたかのように「え?そんなのがあるの?」という驚きを感じてしまうのだという事例として、「ハッピーアイスクリーム」のお話を、ロシアの悪魔のナンバーの話と一緒に、させていただきました!
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