【知ると楽しい】シュメール神話の概要と登場する神様たち

両手に鎚矛を持ち、背中に翼の生えたイナンナ
両手に鎚矛を持ち、背中に翼の生えたイナンナ

浸透してきたとは言え、まだまだ日本での知名度は高くないシュメールの神話について書いていきます。

ギリシア神話や北欧神話と比較すると、歴史が古い事と地域性に富んでいる点が日本に馴染みがない要因かもしれません。

しかし、紀元前4000年頃には既に体系化されていたシュメール神話、登場する神様の逸話も実に人間味溢れる描写がされていて、実はとっつきやすいのです。

補足:シュメール人とは

紀元前3800年頃に、メソポタミア南部に都市国家を建てた民族のこと。

彼らの興したシュメール文明は人類最古の文明であり、シュメール人は歴史上もっとも謎の多い人々といわれている。

時代が下るとメソポタミアやバビロニア、それこそギリシア神話にも多大なる影響を与える事になります。

まだまだ知らないと言う方も、興味はあると言う方もぜひ一読してみてください。

シュメールの創生神話とは?

シュメールにおける創生神話では、アンとキと呼ばれる夫婦の神様が存在しています。

日本神話におけるイザナギとイザナミの様な関係ですね。

この二人が最初に産んだ神がエンリルです。

エンリルは後に神々のリーダー的な立ち位置にも据えられるわけですが、女神ニンリルに横恋慕(よこれんぼ)した神々たちに一度追い出されてしまいます。

そしてニンリルの方は防衛のためにナンナと言う女神を生み、ナンナはニンガルと言う神様と交わりイナンナ等の代表的な神様が増えていく事になります。

両手に鎚矛を持ち、背中に翼の生えたイナンナ
両手に鎚矛を持ち、背中に翼の生えたイナンナ

その後、神々の数が増えていくと食糧難に悩まされる事になりました。

この辺りが人間味あふれる所以の一端ですね。

そこで、知恵の神エンキが自分たちの代わりに労働力となってくれる人間を創り出すのです。

エンキ
エンキ

こうしてシュメール神話は、神々だけでなく後に現代まで残っている人間も登場し、一つの体系化された物語へと概要が固まっていくのです。

興味深いのは、こののち増えすぎた人間に対して、神々は洪水を起こして滅ぼします。

洪水伝説と言えば旧約聖書のノアの箱舟が有名ですが、実はそれよりもはるか以前にシュメールに似たような伝説が存在していたのです。

こちらの船で洪水を生き延びた人間の名はジウスドラと言い、後に永遠の命を賜っています。

登場するシュメールの神々はどのような神?

多神教の神話体系を持つシュメール神話では、じつに多くの神様が登場します。

元々シュメールの土着の信仰の中には、海水の母なる神様と淡水の神様がいると信じられてきました。

海水は地上世界、淡水は地下世界に広く存在すると考えられており、海水の神をティアマト、淡水の神様をアプスーと呼び敬っていたのです。

ティアマトの方はよくRPGゲームにも登場しますし、割と強大なボスとして描かれる事の多い神様です。

後にこのティアマトから怪物が生まれたりもするわけです。

更に初期の代表的な神様はエンリル、エンキ、ニンフルサグ、アヌの4柱で、協力しつつも時にお互いを困らせたりもします。

その他代表的な神様はシン、ニヌルタ、エレシュキガル、ウトゥ、ナンムなどがいます。

先の4柱の神様やニンリル、ニンガル、イナンナ等も合わせてパンテオンの神々とも表現されます。

パンテオンと言うと古代ローマやギリシアをイメージするかと思いますが、日本語に直訳すると万神殿、つまり多くの神がおわす場所と言う意味です。

冒頭でも書きましたが、このパンテオンの頂点に座すのがエンリルと言う事になります。

余談ですが、このパンテオンの神様の数、じつに12人存在するわけです。

勘の良いギリシア神話好きの方は気づいたかもしれませんが、オリンポス12神はこのシュメールの神々がモデルとも言われています。

メソポタミア文明に受け継がれたシュメール神話

時代が過ぎてメソポタミア文明が発展してくると、この神話体系はそのまま取り込まれる事になります。

メソポタミアの人々からするとシュメールは先住民族にあたりますが、その時の神話がそのまま受け継がれ、且つアレンジを加えられたものになっていきます。

殆どの神々は呼び名もかわり、より民間に根付いていく事になります。

ウトゥはシャマシュ、イナンナはイシュタルと、どこかメディア上で聞いたことのある名前が多く登場するのもこの頃です。

またまた余談ですが、古代のシュメールやアッシリア、アッカド地方では主神の位置にエンリルが座していました。

しかしメソポタミアではバールに転じます。

このバール、紀元前1700年を過ぎた頃には、更にマルドゥクと言う神様に変化しますが、後にキリスト教が台頭した際に、唯一神を崇敬するために最も貶められた神様(堕天使のバアルやベルゼブブのモデルになる)で、元祖はシュメールのエンリルだった点は覚えておくといいでしょう。

ティアマトが生んだ11の怪物

こうして物語としても一大化していったメソポタミア神話でフィーチャーされるのはやはり怪物の存在です。

後世マルドゥクが主神になった事を面白く思わなかったティアマトは、11の怪物を生み出したと言います。

邪竜ムシュフシュや頭が七つあるムシュマッヘ、凶暴なライオンでもあるウガルルム等が有名です。

この内ムシュマッヘはギリシアのヒドラや日本のヤマタノオロチに似ている点、ウガルルムもネメアのライオンやマンティコアに似ている等、やはり他の神話に及ぼした影響は大きいのではないでしょうか。

他にも怪物はまだまだ存在しますが、今回は割愛します。

そしてティアマトの方はと言うと、勧善懲悪の流れでもちろんマルドゥクに敗れます。

その体は引き裂かれ、そこから世界の天と地を創造したと伝えられています。一体どれだけ巨大だったのでしょうか……。

 

今回はざっとシュメール神話の流れをまとめてみました。

改めて見てみると、やはり他の神話との類似性や影響力が伺えます。

何より現在のイラン・イラク付近に該当するこの地域では、民族性が複雑になっていく背景もあり、神話も等しく複雑になっていきます。

今後はそれぞれの神様にフィーチャーした記事も書いていこうと思います。お楽しみに!

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