神話に登場するイケメンの神さまを探していませんか?
それなら北欧神話のイケメン神、フレイが候補にあがるでしょう。
容姿端麗で力が強く、信仰も根強かったフレイ。
そのくせ恋愛には奥手というかわいい一面も。
この記事では、そんなフレイの魅力を徹底解説します!
Contents
北欧神話のイケメン神、フレイとは
フレイは北欧神話の豊穣神です。
妹にフレイヤがおり、父親はヴァン神族の海運を司る神「ニョルズ」です。
この兄妹は「アース神族との講和の証」として、オーディンを長としたアース神族の一員に迎えられるという変わった出自をもっています。
雨と太陽の光、それによってもたらされる大地の実りを司る神として、古くから信仰の対象にされてきました。
同じ豊穣神である妹のフレイヤとは、男性と女性で対を成す存在と考えられています。
フレイはもともとヴァン神族だった
北欧神話は豊穣神としての面を持つ神が多く存在しますが、中でも最もポピュラーな豊穣神がフレイです。
彼の特徴は、牝鹿の角を武器にして巨人を倒してしまうほど力が強いこと。
また、布のように小さく折りたたんで携帯できる魔法の船「スキーズブラズニル」、どんな馬よりも速く空や海を駆ける黄金に輝く猪「グリンブルスティ」を所有しています。
しかも、容姿端麗のイケメン!

この画像なんて、とても神々しいですよね。神だけに。
前述のとおり、フレイの出自は変わっています。
彼はヴァン神族ニョルズの子でありながら、アース神族に属しています。
かつてアース神族とヴァン神族は争っていましたが、和睦をする事にしました。
その際、互いに人質を出そうという事になり、ヴァン神族から差し出されたのが、ニョルズとフレイ、フレイヤだったのです。
フレイは豊穣神、富と財産の神、結婚の神といった神性を持っていますが、同時に妖精たちの王でもあります。
まだフレイが赤ちゃんの頃。乳歯が生えて来たお祝いに、神々からアールヴヘイム(妖精、エルフの国)をいただいています。
乳歯が生えただけで国をもらえるなんてスケールが異次元ですね。
この事から、フレイは妖精族の支配者であるという説もあります。
北欧で根強かったフレイ信仰
フレイ信仰は現在のスウェーデン、ノルウェー、アイスランドで活発に行われていた形跡があります。
その証拠として、男根を象った護符が発見されています。
豊穣を司る神への信仰で、生殖器を象る事は世界中でよく見られること。
他にも巨大な男根を持つ神像も見つかっており、男女の結合によって五穀豊穣を神に祈るという原始的な祭祀形態をとっていたと考えられています。
豊穣だけでなく、多産や結婚もフレイの神性として扱われてきました。
フレイ信仰は土俗的な信仰でしたが、キリスト教が北欧に入って来ても根強く残っており、冠婚葬祭の時はフレイに犠牲が捧げられることもあったようです。
北欧のヴァイキングからも信仰されており、ヴァイキングが酒の席でする約束は、フレイに捧げられた猪に手を乗せてきちんと誓いを立てて行われました。
なので、酔った勢いで適当な約束をしても「あんなの冗談だよ、本気にすんなよ」と笑い飛ばすようなことは出来ませんでした。
スウェーデン最初の王家はフレイの子孫?
『ヘイムスクリングラ』(スノッリ・ストゥルルソン作のサガ)の序章「ユングリング・サガ」によると、フレイは司祭であり、オーディンとニョルズの死後に王権を受け継ぎ、ユングリング家の祖になったと記されています。
同書によると、オーディンはアジア方面からアースガルドに移住し、周辺を武力で制圧したあと、神官たちと共に供養などを中心とした習慣を大事にして民族を治めていきます。
オーディンの死後はニョルズが引き継ぎ、オーディンと同じように周辺を支配しスウェーデン王になります。
そしてニョルズの死後は、息子のフレイが王になったということです。
その後、フレイは所領地のウプサラに大神殿を築き、彼の死後は妹のフレイヤや息子のフェルニルが国を支配しました。
ウプサラに建てたとされる神殿の存在を裏付ける史料はいくつかあり、それには祭りに犠牲が捧げられたことが記されています。
それらの史料の一つに下記の記述があります。
「病気になったらトール、戦争についてはオーディン、結婚したければフレイに犠牲を捧げよ」
また、このウプサラの神殿にあるフレイの神像も、男性器によって表現されていました。
「ユングリング」は祖のユングヴィからつけられた名ですが、このユングヴィというのがフレイの本名です。
「フレイ」は厳密には名前ではなく「主君」「支配者」という意味を持ちます。
従者のおかげで結婚できた?フレイの恋愛事情
フレイは容姿端麗ですが、恋愛下手ないわゆる「ヘタレ」なエピソードがあります。
それは女巨人ゲルダへの片思いについてのお話です。
ある日フレイは戯れに巨人の国ヨトゥンヘイムを眺めてたら、とても美人な巨人の娘を見つけます。
彼女に一目惚れしたフレイは、従者であり幼馴染のスキールニルが館にやって来た際に恋愛相談をします。
スキールニルは「そう言う事ならあなたの持っている、持つ者が賢ければひとりでに巨人を倒す魔法の剣と、あなたの愛馬をくれれば、使者になって彼女に話をつけに行きますよ」と言います。
フレイは愛しのあの子と結ばれるなら!と、快く魔法の剣と愛馬を与えました。
スキールニルはゲルダのところに行き、フレイの恋心を伝えて黄金の林檎や黄金を生み出す腕輪を贈ります。
しかし、ゲルダはすべて突っぱねてしまいます。
贈り物作戦が駄目だったので、スキールニルは
「そこまで言うなら、この魔法の剣でお前の首を切ってやる。ついでにみんなから嫌われて、一生独身になる呪いもかけてやる!」
と脅迫し始めました。
これには気の強いゲルダも従うしかなく、9日後にフレイに会うと約束しました。
スキールニルはフレイにそれを伝えると、
「恋に身を焦がす自分に9日後というのは長すぎる。まるで一か月後のように感じるよ」
とこぼしています。
こうしてフレイとゲルダは夫婦になったということです。
イケメンのくせに、なかなかに奥手な神さまなのですね。
なお、フレイがラグナロク(最終戦争)でスルトとの戦いに敗れたのは、スキールニルに魔法の剣を渡してしまったからだと言われています。

この剣も愛馬もこの話以外で登場する事はなく、その後剣がどうなったかは定かではありません。
一説にはムスペッルの長のスルトの手に渡ったとありますが、その経緯は謎に包まれているようです。
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