ギリシア神話の最大の神様といえば、やはりゼウス様。
オリュンポスの神々の統治者にして、宇宙そのものの秩序を握る圧倒的な存在。
堂々たる「最高神」のイメージです。
当然ながらギリシア神話の中で最も重大な存在にして、多神教の世界観ながらゼウスだけは「全知全能の神」といってもよいほど、別格のレベルで扱われている、ということになります。
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現代ギリシャでゼウス様が祀られているところはどこですか?

となると、こんなふうに考える人もいるかもしれません。
「現代のギリシャに観光に行ったら、ゼウス様の大神殿みたいのものはあるのかしら?ギリシア神話が好きなので、日本人的な発想かもしれないけど、ぜひゼウス様の神殿で二礼二拍手一拝してご利益に預かりたいと思います」
実は本稿のライターは子供の頃にギリシャにいたことがあるので、このような質問には、リアリティをもって回答できます。
というわけで回答いたします。
結論として、「できます」。
ギリシャの首都アテネに「ゼウス神殿」という場所がありますので、そこを訪れてみるのがよろしいかと思います。
ゼウス神殿は、まさに都市の真ん中に建っているので、タクシーでも地下鉄でも、市内観光のついでに立ち寄れます。
「それは凄い、ギリシア神話でおなじみのゼウス様にぜひご挨拶を!」
と思った方、その前にまずは私の体験談をご確認ください。
ライターの体験談:実際にゼウス神殿に行ってみると・・・「えー?」

私がギリシャにいたのは子供の頃なので、もうずいぶん昔の話ではありますが、一通りギリシア神話の本も読んでいた私、当然「ゼウス神殿に行ってみたい」となりまして。
さっそく父に連れられて休日に出かけてみました。
着いてみて、少年だった私の第一印象は……。
「……倒壊しているじゃないか!?」
もうひとつ、付け加えるとするならば、私は初めてギリシャに降り立った夜、空港からタクシーでホテルに向かう途中に、
「大きな円柱の瓦礫がゴロゴロ転がっている巨大な公園みたいなのがあるなぁ」
と車窓から見かけた記憶があったのですが、あとからわかったことですが、それがゼウス神殿でした。
でも言っておきますが、最近の観光ガイドブックの写真をみるかぎり、現在はそれなりに公園としてキレイには整備されているみたいで、だいぶマシになったみたい。
私が行った子供の頃は、本当に野ざらし状態。
円柱の瓦礫の上に半裸のおっさんが寝そべってハンバーガーを食っているという、二重三重に近寄りがたい有様でした。
どうしてこんなことになっているのか?現代ギリシャの宗教事情
考えてみれば、ギリシャは現在でもヨーロッパにおける重要な「聖地」ですが、聖地は聖地でも、キリスト教(ギリシャ正教)の聖地。
ギリシア神話の神々が信仰の対象になっているわけではありません。
最近の統計を調べてみると、ギリシャ人の97%がキリスト教徒であって、残る3%をユダヤ教徒やイスラム教徒などが割っている状態。
ギリシア神話は今日のギリシャ人たちにとっても「遠いおとぎ話の話」であり、良くも悪くも、ただの観光資源なのです。
しかもキリスト教の世界観でいえば、ギリシャ神話の世界はキリスト教によって克服された「古い時代の信仰」です。
その当時の信仰の対象が、現代も生きているようだと、これはこれで困るのです。
よって、ギリシャ神話時代の宗教的なスポットは、基本的には廃墟の公園。
入場料を払ってガイドツアーでぐるぐる瓦礫の中を踏破する、そんな関係になるのでした。
しかし大人になってからの私の感想としては、キリスト教によって追いやられた神話時代の廃墟が、野ざらしになりながらもしぶとく残っている姿は、それはそれで趣があり、ヘタに再現するよりはこのまま置いておくのもいいかなと思ったりもするのでした。
現代ギリシャに行くなら、「キリスト教の聖地巡礼」と「古代遺跡のトレッキング」の2本立てで!
というわけで、現代のギリシャに行って「土地の人々の信仰に触れたい」というのなら、正教の教会巡りをするのがオススメ!
よくカレンダーや写真に出てくる、青い海を背景にした白塗りの壁に青いドームの可愛らしい教会、あれがまさに正教の世界です。
礼拝も行われていますし、お坊さんが常住していて、昔ながらの信仰生活を垣間見ることができます。
え?そうではなく、ギリシア神話の神々に対する宗教行事を見学したい?
そうですね、ギリシャの観光協会のページなどを丹念に調べて、その手の「文化保護団体」が催しているイベントを見つけるしか、手はないかもしれません。。。
あきらめて現地ツアーに参加し、神殿の遺跡をトレッキングするのがよいかと思います!
「廃墟扱いだが壮大」な遺跡としては、アテネとは違う街ですが、ミュケーナイ、バッサイあたりが凄まじい迫力で、オススメです。
ギリシア神話の世界を宗教的に信じている人も、ごくわずかながら存在する!?
それにしても古代のゼウス信仰の名残がほとんど感じられないのは、かえすがえす、残念ですね。
ですが、聞けばイギリスでは最近、キリスト教より前の宗教である「ドルイド教」が、地域おこしやエコロジー思想と結びついて、若い世代の間でブームとして復活傾向だとか。
ギリシャの古代信仰も愛好家たちによって復活することもあるかもしれません。
いちおう調べてみたところ、確かに小規模ながら、そういう宗教団体はありました。
エコロジー団体や、その他の政治団体とも関係しているようなので、なかなか背景は複雑そうですが、
「古代ギリシャの神々への信仰を現代に取り戻そう」という活動をしている組織が、ギリシャにあるそうです。
ただし統計によると、その活動に参加しているのは、一千万強のギリシャの人口の中で、せいぜい2,000人。
先のりはまだまだ長そうですね。
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