死して神となった関羽|週末は中華街の関帝廟へお参りしよう

横浜中華街「関帝廟」
横浜中華街「関帝廟」

中国神話の面白いところは、歴史上の実在の人物や、大衆芸能のキャラクターまでもが、時代を経ていくうちにいつしか神様にまで出世することがあるところ。

日本も八百万の神(やおよろずのかみ)の伝統があり、なんでもかんでも神様になり神社が建てられる傾向がありますよね。

そういうあたり、庶民の神話や伝説のレベルでは、日本と中国はなんだかよく似ているところがありそうです!

もっとも、そのいっぽうで「人気さえあれば人間でも神になる」という話は、西欧の人たちには説明が難しいところなのですが。。。

ところで「神になった実在の人物」ということでは、中国史には圧倒的な代表格がいます。

日本でも『三国志』人気のおかげでおなじみ、関羽です!

日本各地の中華街にある「関帝廟(かんていびょう)」って、ナンダ?!

横浜中華街「関帝廟」
横浜中華街「関帝廟」

日本にも各地に中華街があり、お出かけスポットとして週末はにぎわいます。

関東の人なら横浜、関西の人なら神戸、九州の人なら長崎を思い浮かべるでしょう。

より小規模ながら函館や那覇も、日中交流の歴史深い町として有名ですね。

そしてそういうところにドンとそびえているのが、関帝廟。

正直な話をしますと、私も中国の神話や伝説に詳しくなる前の、『三国志』を読み終えたばかりの十代後半の時に、友達と横浜中華街へ行った時、

「え?!関羽が祀られている宗教の建物があるぞ?!ナンダあれちょっと怖い!!」

と関帝廟見学を敬遠してしまったことがあります。

お恥ずかしい。無知でした。

そして無知は損ですね。

タイムマシンがあったら、当時の頭の悪い私のところに駆けつけて、教えてあげたい。

関羽を神様として祀っている「関帝廟」は、アヤしいところなどまったくない、伝統のあるきちんとした信仰対象だぞ、と。

そして今では、横浜のみならず、各都市の中華街に行った時は関帝廟見学を楽しみのひとつに入れるようになっております。

皆様にもぜひ、オススメしたい。

関帝廟は、中国の方々の民間信仰に触れてみたいという場合は、入門として絶好の施設ではないでしょうか。

まずは気軽なお出かけとして、中華街に出かけておいしい料理を頬張ってから関帝廟に入ってみてください!

線香をお供えするというシンプルな参拝が一般的なやり方ですし、日本の関帝廟なら受付に質問すれば喜んでやり方を教えてくれます。

そもそもあまり堅苦しいことがなく、中を見学して帰るだけでも十分楽しめるのが、関帝廟のよいところです。

2000年の歴史を経て神格がどんどん「出世」!こうして関羽は神となった!

関羽(歌川国芳、『通俗三国志之内』
関羽(歌川国芳、『通俗三国志之内』

それにしても『三国志』の事情に詳しい人ほど、関羽が神様になっていることには、一瞬とまどいを感じるのではないでしょうか。

たしかに関羽は最強クラスの英雄として活躍するが、人間くさい失敗もする。

最後は敵の計略にかかって殺された悲劇の英雄。

もっと詳しい人なら、正式な歴史書である『三国志正史』のほうでは、「関羽は性格に傲慢なところがあった」という批判も載せられていることを知っているかと。

その関羽がどうして神様にまでレベルアップしたのか。

詳しい話はぜひ専門家の書籍をあたっていただきたいと思います。

たとえば二階堂善弘さんの『中国の神さま』(平凡新書)が、この関羽の話にかなりのページを割いています。

以下、私なりにこの二階堂善弘さんの本から要点を抜き出すと、

  • もともと三国時代のあと、関羽だけでなく、いろいろな三国志のキャラクターが神様扱いされた時期があった
  • 特に関羽の出生地とされる山西の商人たちが中国全土で活躍していく中で、彼らにとっての地元の英雄「関羽」を特別視する風潮がブームになった
  • 唐の時代には、関羽は「非業の死をとげた怨霊」とみられていた時期もあり、それが「関羽は特にていねいに祀る」伝統に拍車をかけた模様
  • その後、歴史が進むに伴って、関羽の「神」としての伝説にはどんどんオヒレがついていった
  • 清王朝が国民に「三国志演義はためになる本」と奨励し、かつ「忠義者の関羽は人格としても模範」とした。権力側も推薦したことで、ますます関羽の神格化が進んだ

このような経緯のようです。

ですが結論としては、専門家である二階堂善弘さんも、以下のようなことを言っている。

民間伝承での関羽伝説の拡がりは、あまりに広大で、全貌を把握することはほとんど不可能。

関羽だけが圧倒的人気の神様になった理由は、厳密にいえば「不明」。

さまざまな偶然が働いて今日まで「神としての出世」が進んだのだ、としか言えない。

逆説的かもしれませんが、「専門家ですら、もはや不明と言っている」という結論が、神話や伝説を愛する本稿のライターのような立場からすると、最高にありがたい「専門家のオスミツキ」に聞こえます!

専門家が調べるほどむしろナゾが深まる・・・うん、そうこなくちゃ!

こんなにいろいろある関羽の「神っぷり」エピソード

その二階堂善弘さん、関羽の伝説がいかに多種多様にあるかの事例として、以下のような民間伝承を紹介してくれています。

  • 「そもそも関羽は神になった人間ではなく、もともと神だったものが下界に降りてきて人間に化けていたのだ」
  • 「いや、最初は龍だったのだ」
  • 「関羽が刀を研ぐと、その地方は必ず雨になる」
  • 「最終的に関羽は天界の最高位にまで上り詰めた」

なんだか素朴で、微笑ましい話ばかりですね。

ドラゴンボールのキャラクターみたいに、どんどん話が(いい意味で)トンデモになっていく!

みんなが大好きなキャラクターが無限大に超人化していって、最後には「神様」として廟まで建ってしまうという感覚は、なんだか日本人である我々にも「わかる!」感覚ではないでしょうか?

日本と中国。

政治や経済といったカタい話ばかりではなく、ぜひ神話や伝説のレベルでの民間理解も深めてほしいなと思います。

その入門として、週末に中華街に出かけた際には、関帝廟を覗いてみるのはいかがでしょうか?

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