【Fate/FGO出典解説】ニトクリス:兄弟の復讐に身を捧げたエジプト女王

今回は「Fate/Grand Order」の登場人物、古代エジプトの女王「ニトクリス」についてのお話です。

FGOにおけるニトクリスが使う技(宝具)には2種類ありますが、1つは歴史書に残る彼女の逸話から、もう1つは彼女を題材にしたクトゥルフ神話のアイテムからというちょっと変わった設定になっています。

それぞれの出典について、順番に見ていきましょう。

エジプト第6王朝の女王ニトクリス

彼女は紀元前23世紀頃から紀元前21世紀頃にあったエジプト第6王朝の末期において王を務めた人物だと記録されています。

ニトクリスについては、彼女が生きたとされる時代当時の記録などは残されていないのですが、もういくらか時代が下った頃、紀元前5世紀頃の歴史家ヘロドトスや紀元前3世紀頃の歴史家マネトの著書に彼女の名前が挙げられています。

ヘロドトスは古代史について広く調査と記録を行っていたギリシャ人で、彼の著作である『歴史』という本に歴代のエジプトの王についての記述があり、その中でニトクリスという名の女王がいたという記述があります。

また彼女の生きた時代がエジプト第6王朝であることは、マネトの断片集『アイギュプティカ』という書籍で触れられています。

このように彼女はファラオの一人として記録されているものの、王としての目立った実績は残されていません。

その代わりに有名な逸話がひとつ残されています。

それは先に挙げたヘロドトスの著書『歴史』が伝える、悲しい復讐劇でした。

ニトクリスの復讐劇

この復讐劇が、FGOのニトクリスが使う技の1つ、「穢れを漱げ、青く美しきナイル(スネフェル・イオテル・ナイル)」の元になった逸話です。

技名を平たく説明するなら、「ナイル川の水で罰を与えて穢れ=罪をそそぐ」というものです。

彼女が復讐を行った相手は、政治的な謀略で彼女をおとしいれた家臣たちでした。

彼らは王位継承権を持っていたニトクリスの兄弟達を暗殺し、若い王女であったニトクリスを王に仕立て上げ、影から操る事でエジプトの実権を握ろうと暗躍していた人々です。

しかし彼らの言いなりになる彼女ではありませんでした。

ニトクリスは兄弟達の仇討ちのため、ある策略を立てます。

彼女はまず大きな地下室を造らせ、そこで宴を開く事にしました。

招待客は兄弟達を暗殺した犯人である家臣たちです。

この地下室には密かな仕掛けがありました。

エジプトといえば広大なナイル川のほとりの文明ですが、そのナイルの河水を室内に引き込めるような作りにしてあったのです。

宴が盛り上がった頃を見計らい、彼女自身は地下室を出て、仕掛けを起動させました。

そうする事で部屋の出入り口は塞がれ、代わりにナイル川に繋がる水路が開いて室内はあっという間に水で満たされます。

当然ながら室内にいた家臣たちはみな溺死してしまいました。

FGOにおいては敵を小さな石室に閉じ込めて大量の水を流し込む演出がなされますが、まさにこの大掛かりな復讐装置を再現している訳です。

この復讐をなしとげた後、ニトクリスは焼身自殺によってその短い生涯を閉じました。

自殺の理由は「後になって報復されるのが恐ろしくなった」という説もありますが、古代ペルシアによく似た刑罰があった事を理由に「兄弟のためとはいえ殺人の罪を犯した事の償いとして、自分に罰を与えたのではないか」という説もあります。

クトゥルフ神話の異世界に繋がる「ニトクリスの鏡」

クトゥルフ
クトゥルフ(うにょっく/脳痛男

以上が歴史上に伝えられる彼女の物語ですが、もう一つ、彼女をモチーフにした「ニトクリスの鏡」というアイテムがクトゥルフ神話に存在します。

これがFGOのニトクリスが使うもう一つの技「冥鏡宝典(アンプゥ・ネブ・タ・ジェセル)」の元となっています。

こちらの技名は文字通り「冥界を映す鏡」といった意味で、別名として「ニトクリスの鏡」という名称そのままで呼ばれたりもしています。

クトゥルフ神話に伝えられるニトクリスの鏡は、魔物の姿が装飾された枠に飾られた大鏡で、その鏡面は鏡としての役目を果たす代わりにクトゥルフの魔物の住む暗黒の異世界へと繋がるゲートになっているというものです。

歴史上の古代エジプトより更に昔の時代にクトゥルフの神を信仰していた部族がおり、彼らの残した遺跡から発見されたこの鏡がニトクリスの手に渡ったとされています。

FGOにおけるニトクリスの鏡は冥界のような世界から悪霊を呼び出すという力を発揮していますが、使い方次第ではもっとまがまがしい化け物も呼び出せてしまうのかもしれません。

まとめ

ニトクリスの使う二つの力の原典についてご紹介しましたがいかがでしたでしょうか。

「ニトクリスの鏡」がクトゥルフ神話由来であることはゲーム中では触れられないので意外だったかもしれませんが、先に挙げた古代エジプトでクトゥルフ信仰をしていた部族のもとには、有名なクトゥルフの神ニャルラトホテプも訪れていたりするなど、エジプトとクトゥルフ神話は案外縁があったりします。

ちなみに自在に姿を変えるとされるニャルラトホテプですが、エジプトにおける姿は「顔のないスフィンクス」。

これもFGOにおいて、同じくエジプトの王であるオジマンディアスの演出で登場していたりしますが、彼の話はまた別の機会に。

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